ガチャ


「お早う御座います高屋敷君。朝御飯ですよ」
出せーこっから出せー!!最近閉じ込められる話が多すぎるよー!」
「話…?まあそれはそれとして、窓の鉄格子の隙間から手を出すのは今後止めて下さいね?目撃した生徒が理科準備室には幽霊が出るとか何とか騒いでしまいました」
「助けてー!!」
「嫌ですねえ、そんな事を言っては更に怪しまれてしまいますよ」
「出来たら怪しまれてほしいね!誰かぁー!!」
「困った子です。私なりに君の身を案じて閉じ込めていると言うのに」
「どこがだ!?僕、別に匿われなくちゃいけない悪い事して無いもん」
「まあ解って貰えなくても良いですよ。面倒臭いですし…あれ、まだこんなもの持っていたのですか?妨害電波を流しているから無駄ですよ?」
「人のケータイ勝手に見るなー!!」
「高屋敷君が浮気していないか心配で…」
「付き合ってから心配しろ!!いや付き合わないけど!!」
「壁紙可愛いですね。豆大福?」
「ジャンガリアンハムスター!!」
「そうですか。まあ、どちらにしても可愛らしい」
「…意外と女子からメールを貰ってるんですね……内容が少々おかしいですけれども」
「一緒にケーキの材料買いに行く約束メールのなにがおかしいんですか!?って言うか見るな!!」
「前々から疑わしく思っていましたが、君は本当に高三の男の子なんですか高屋敷君?足の親指と親指の間に付いてると思ったのは見間違いだった様な気がしてなりません」
「生々しいこと言うなっ!」
「…(バキン!)」
あああ逆に畳んだー!?!折り畳みケータイ逆に畳んだー!!なにしてんの?!」
「壁紙が妬ましくて、つい…!」
「ジャンガリの壁紙くらい言えばあげたよ!?」
「まあまあ良いじゃありませんか。どうせ使えないんですから」
「全然よくないー!ふあーん!!出せー!!」
「ドアをガチャガチャやったって開きませんよ。無駄なことをしないで早くご飯を食べてしまって下さいな」
「いらないもん!」
「はい、あーん」
「あー」
「美味しいですか?」
「もっと」
「どうぞ。沢山食べて下さいね」
「あむあむ」
「良い子良い子…さて、それでは私は授業の準備がありますので、もう行きますよ」
「もむもむ。いってらっしゃい」
「はい、行ってきますね」



ガチャ…パタン。……ガチガチャ、カシャンカチ



………はっ!?!

ししししまったご飯に釣られてまた閉じ込められたー!!

なんて教師だ!騙されたあー!!



「先生ぇー!安西先生出してよここ開けてよあーけーてー(バタン!でべっ!?!
「何ですか高屋敷君。騒ぐなと言っていたじゃありませんか」
「急に開けないでよ鼻血が!!顔面が全域痛い!!」
「大人しくしていないとその可愛いお顔を二目と見れない程叩き潰しますよ?別に無理難題を突きつけてる訳じゃないのに、うるさい子です」
「だってだって、なんで閉じ込められなくちゃいけないの?僕、学院祭の準備だってしなくちゃいけないのにこんな

とこ入ってらんないよう」
「ですからねえ、ここから出たら危ないのですったら」
「危ないってなにが?」
「…気になります?」
「うん」
「ではまあ、少しだけですよ…おんぶしてあげますから、いらっしゃい」
「おんぶー?なんでー?」
「死にたいのでしたら構いませんが…」
はい乗ったよ!絶対落ちないから大丈夫だよ!!
「じゃあ、出てみましょうか」




ガチャ

『あ、明日染め直してきますかアグヘゲエェ!!!』『止めます!上までボタン閉めますからオバベッ!!』『ネ

、ネクタイ曲がってる?!今直しまナゴバァッ!!!』『折ってませんスカート折ってません元から短くってヒゲガ

ゴッッ!!』




「……!…!?!
「会長君と風紀委員長ですね。ああ、流石にあの二人が居る場所に連れて来るのはまずかったでしょうか」
「ななななにやってるのあれ?!死んでるいっぱい死んでるよー!!」
「今日は学院祭に向けての不良生徒狩りなのです。父兄に風紀の乱れを見せる訳にはいきませんから」
「え?そ、それじゃあ僕別に危なくないじゃん、ちゃんと校則守ってるよ?髪は地下で校則違反な色だけど…」
「あの生徒会長君と風紀委員長君を見てそんな事が言えますか?」
「…あの、鬼神の如き二人…?」
「生まれ付き頭髪の色が明るいとか、そんな言い訳が通用しない状態ですからねえ」

『…!…』

「ひ!?あわわ会長がこっち向いたよ安西センセー!!」
「ん…ちょっとまずいかもしれませんが、まあ大丈夫でしょう。少し正気に戻っているようですし」
『安西先生、お早う御座います』
「はい、おはよう御座います会長君」
「(も、もういいよセンセ戻ろうよー…!)」
「(君が出たいと言ったのでしょう?)」
『申し訳ありません、安西先生。本来なら風紀委員長にも挨拶をさせるべきなのですが、周りが見えていないようなので』
「(それはそうだけどー)」
「良いのですよ、その事で処罰は不要です。職務の邪魔をしてしまったのは私の方ですから」
『はい、安西先生。寛大なご処置をありがとう御座います』
「(はうう怖いよう…眼前で惨劇が繰り広げられてるよー……ってあれ?風紀委員長が消え…)」
「まあ取引をしたいだけですよ。教員に対する非礼は見逃してあげますから、換わりに高屋敷君も…ね」
『……それが、安西先生のご意思でしたら、俺は構いませんが』
「(ど、どこ行ったのかな?なんか嫌な予感がするんだけ(ザグドシュ!!))オグバアァッッ!!?
「あ」
『あ』



『………頭髪違反…』



「あー、風紀委員長君…」
『申し訳ありません、安西先生。風紀委員長のことを考慮していませんでした』
『…おはよう御座います』
「おはよう御座います風紀委員長君…背後から一刀両断ですか……首、返してくれます?」
『…?』
『その手に持ってる茶髪の頭だよ、風紀委員長』
『…これか』
『それと謝罪の言葉を』
『すいません』
『もっと丁寧に』
『すみません』
『…申し訳ありません、安西先生。俺が代わって謝ります。どうぞご容赦を』
「良いですよ、無愛想な子は嫌いじゃないですから。…ですが、直すのが面倒ですねぇ…」
『俺が直しておきます、安西先生』
「ん?良いのですか?学院祭で忙しいでしょうに」
『構いません、配下の不始末は俺の不始末です』
「優しいですねえ会長君…それではお願いします。ねえ風紀委員長君、良い上司を持ったことに感謝しなければなりませんよ?」
『…』
『風紀委員長、返事を』
『はい』
「…大変ですねぇ会長君」
『いいえ、もう慣れましたので』
「風紀委員長君も、学院祭当日の校内見回りを期待していますよ?」
『…』
『風紀委員長、返事を』
『皆殺す』
「んー…良い心がけですが、計画の前段階で皆殺しはまずいですねえ」
『その点は俺が監督しますので、御心配は無用です、安西先生』
「期待しています。…それでは引き止めてしまってすみませんでした。お仕事に戻ってくれて構いませんよ」
『いいえ、安西先生。こちらこそ高屋敷君に無体な事を申し訳ありませんでした。では、失礼致します』
『失礼します』
「はい、頑張って下さいね〜…







 …………会長君たら、高屋敷君の胴体を持って行きませんでしたけれど…なるべく小さな体躯の生徒からもぎ取っ

てくれますかねえ?」

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