ガララ


「安西センセこんにちわー!」
「…ああ、高屋敷君ですか」
「ねーセンセ聞いてください。昨日ね、おべんと食べてもイチゴ牛乳飲んでも貰ったポッキー食べても全然おなかいっぱいにならなかったの。なんでだと思う?」
「………さあ」
「あのねー、僕もね?変だなーと思って見てみるまで気付かなかったんですけどー」
「ん…」
「胃がね、無かった」
「…は?」
「体育の時間に、ちょっと抉れちゃってたみたい。腹膜とか小腸も一部どっかに落としてましたー」
「保健室へは、行ったのですか?」
「うん。治してもらったですよー」
「それは良かった」
「でもね、胃が無い時にご飯とか食べちゃったからー…今おなか空いてるの」
「ああ…どうぞ、カロリーメイト」
「わーい!ありがとございます♪えへへ、これ期待してたんですよー」
「おやおや、あざとい子ですねえ…」
「だってー安西センセはお菓子持ってるしー僕はおなか空いてるしー。このほーてーしきからみちびかれるのはお菓子をたかるしかないじゃないですかー」
「はいはい……美味しいですか?」
「うんっ!!」
「それはそれは…」
「?…んー?どしたのセンセ?今日なんか元気ないー」
「…別に…」
「ウソウソ!どーしたんですか?おなか痛いんですか?おくすりあげようか?」
「いえ…本当に何でもないのです。…ただ少し眠いのですよ」
「あ…そうなの?」
「ええ、ですから今日は…」
「うんわかった!一人で静かに遊んでるね!」
「……帰って欲しかったのですが」
「安西センセ、センセの鞄漁って遊んでるからねー」
「ふう…」
「あー♪これ新発売のシューですね?いい匂いですよねー!スパークリングオレンジでしょ」
「はあ…コンビニのおまけでついてきて……香りは合っていますが…シューとは何のことです?」
「え?シューはシューじゃん。汗かいたらシューッてするやつ」
「制汗剤でしょう?」
「シューじゃん」
「ふう…若者言葉は解りませんねえ」
「わーいい匂いするー!!」
「どこをどう静かにしているつもりなのでしょうか…ああ、高屋敷君、こっちに来なさい?」
「?なあにー?…あ」
「…」
「あーん返してくださいー!僕が最初にシューで遊んでたのにー…(プシュひゃんっ!?
「ああ、確かに…良い匂いです」
「つ、冷たいじゃないですかー!かけるんなら自分の身体にかけてよ(プシュ)きゃうぅ!」
「…あはは」
「やあっなにすんの…(プシュウウ)ひんんっ?!あっやっ…(プシュー)ひゃああん!!」
「あっはは!冷たいですか高屋敷君!?」
「いやあなにコレなんのプレイなのいやああぁ寒い冷たい痛いぃー!!
「良いですね良いですねえ高屋敷君!制汗剤が何本あれば君は凍傷で死ぬでしょうね今から実験してみましょうか!」
わあああマズい方向に目覚めさせちゃったいやあ助けてー!!
「高屋敷君、取り合えず一万円渡しますから、買えるだけ制汗剤を買ってきて下さいな」
「なんで自分が殺される為の道具を買ってこなくちゃいけないのー!?十字架運ぶキリストかよ!!」
「ああ煩い子ですね。黙りなさいこの受け」
うわーん!?一番言われて嫌な罵倒の言葉をよくもー!!」
「健気受け」
「もっとイヤ!!グレードアップしてもっとイヤ!!」
「…鬼畜受け?」
「それは当てはまってないから効きません」
「そうですね、私もそんな高屋敷君は見たくありません。大人しく流され受けのままでいて下さい」
だからそんな属性はねえて言ってんだろうがー!!
「ところで今私は待ち受けという属性を考えたのですが、言葉が先行してしまって意味が着いて来ていません。どんなキャラ付けだと思いますか?」
「さっきからうるさいなアンタ!それ以上やおいネタを引っ張るな!!」
「…さっき…まで、何を話していたのでしたっけ?」
「え?…えー……え?忘れちゃった」
「忘れてしまいましたね…」
「うん…でも確か僕に都合の悪い話だったから、別に忘れても…」
「ああ!思い出せない!忘れてはいけない筈の何かを私は!私は!!」
うわー!!なに机に頭をガッツンガッツンやってるんですか安西センセー!?ご乱心しないでよそんなキャラじゃないでしょ?!」
「ふふ…年は取りたくないものですねえ高屋敷君……」
「(うっわ額がぱっこり割れて血がダラダラだ…ていうか今日の安西先生なんか変。眠いの邪魔したからかな…?!)」
「高屋敷君、顔が何だかべたべたするのですが何か付いていますか?」
「え…あ……ううん、何にも付いてない…です」
「何故目を逸らすのです」
「正視に耐えない…」
「ところで、何だか急に頭が痛いのです。どうしてでしょう?」
「そりゃそうだよ。痛い筈だよ」
「痛い…頭が……頭が割れそうなんですよ高屋敷君!!持ってるのでしょう出して下さいこのままでは私は私は壊れてしまいそうなんですよ!!」
「わー!わー!もう割れてるけどしっかりしてください安西センセ僕白いおクスリなんて持ってないー!!」
「!?…そうなのですね高屋敷君…君は…君はその体内に宇宙の遺産を隠しているのですね…?」
「なに言ってるの先生なに言ってるの先生?!しっかりしてナチュラルトリップしないでもう安眠の邪魔しないからー!!」
「許しません!遺産を隠すなどオイルサーディン缶は200円前後で買えるのですよ。そう右の人が語りかけたので私はアコーディオンを奏でました演奏しました、演奏をするのは紙片、紙片は白いので、つまり、テレビです。テレビは音と映像を伝える。映像、を、伝える。伝える≒伝達はポップコーンの原理(普遍的原理)。米の粉が起こす風、風の匂い。詩的な意味での風の匂い。それは栄養士としてのオートロックの以下同文ではないだろうか。いや、二等辺三角形でなくてはいけない。三角形は内角の和が絶対的に180度でなくてはいけない。よってコンクリート片の落下による衝撃音及び衝撃波は相殺に。変化、変形、変質こそがイワシ袋の恩恵と認めるのは誰か?どのような人物か?どのような人格か?そこで発生。骨との会話。会話の終焉。沈黙。幕。冷たい、万能ネギの効能。冷却されたオールマイティーなネギのもたらす良しとされる結果の情報。情報を得ることは容易いがクラシック音楽のそれではない。沈黙、沈黙、沈黙は沈黙の三乗で同音異義語としての惨状で不規則に並ぶ。時として規則的に不規則に並ぶ。大地賛奨としての合唱曲が落とすハート型効果の有益な活用法とは右舷にありと魚を飼育する人が言った。気がした。ナトリウムの奏でる鎮魂歌は強く時に鉄骨であり弱く時にエナメル質だろう。だろう事はワーグナーが語る。語る語る警告するオレンジ色をしたメンタルを白い石が象ったそれは椅子の形状に酷似していたがそれは椅子ではない、椅子では、ない、地下道の壁がそう言った、それは、椅子、では、ない。それは信用に足れるか歌う人に聞いた人がいた。アヤトリ。先発として右。骨が歌う。歌う人ではない骨が歌う。そこで警告。幕。左、左、左としての警告」
「………」



僕は

僕は泣き

僕は泣きながら

僕は泣きながら安西先生の首を

僕は泣きながら安西先生の首を絞めました


目を零れそうに見開いて僕を見ていた安西先生を

僕は一生忘れられないのでしょう


先生の細い首を絞めていた僕の指の爪が

力が篭って白くなっていたことを

僕は一生忘れられないのでしょう


首を絞める僕の腕を掴んだ安西先生の

腕に力がまるで無かったことを

僕は一生忘れられないのでしょう


僕の

僕の力では

僕の力では安西先生を

僕の力では安西先生を殺せませんでした


安西先生は起き上がりました

起き上がるまでの十分間

僕はなにもしませんでした

脈があったのに尚も首を絞めようとはしませんでした

息をしていなかったのに人工呼吸をしようとはしませんでした

僕はなにもしませんでした


安西先生は

安西先生は起き上がって

安西先生は起き上がって僕を見て

安西先生は起き上がって僕を見て微笑みました


どうして泣いているのですかと尋ねて

僕の頭を撫でました

安西先生は覚えていませんでした

安西先生は忘れていました

安西先生は僕に殺されたことを忘れていました覚えていませんでした


安西先生は僕に殺されたことを忘れていました覚えていませんでした微笑んでいました


僕は

僕は安西先生に

僕は安西先生に教えるのが怖くて

僕は安西先生に教えるのが怖くて黙っていました


でも僕は一生忘れられないのでしょう









この手に残る感触を

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