ガララ

「こんにちわー安西先生ー…いないの？」

『僕いるよお母様ー★』

「うおあビックリした！！僕そっくり…ってことはとと、智美ちゃん？！」
『？そうだよー！』
「ちょ…ええ！？成長早すぎるよ！！なに？犬？」
『ボク犬じゃないよー？』
「うん、知ってる。あのね、今のは言葉のあやなの。わかる？」
『わかんない』
「うんそうだよねー、わかんないよねー？わかんなくていいよ。抱っこしてあげるからこっち来な？」
『うん！お母様好きー』
「よいしょっ…あのね智美君、その呼び方はやめて欲しいなー」
『どうしてー？』
「うー…男の意地って言うか…」
『お母様、ボクわかんないよー』
「そうだよね、わかんないよね。いいよもうお母様で」
『お母様大好きー★』
「僕も智美君のこと好きだよー」

「ただいま帰りましたよ智美君…おや高屋敷君、来てたのですか？」
「あ、センセお帰りなさい」
『おかえりなさいお父様ー★』
「……結構良いですねえ、アットホームとは」
「なに言ってんだぶっ殺すぞこのエロ教師。いつまでも僕が笑ってると思ったら大間違いだこんちくしょう」
「おやおや、なんだか随分お怒りのご様子ですねえ？ですが、子供の前だから残酷なシーンは規制すると思ったら大間違いです。殺しますよ？」
「だってだって！！高校生で子持ちになってしかも僕が母親になったらやさぐれたくもなるよ！！」
「まあまあ、面白いから良いじゃあありませんか」
「全然よくないよ！！」
『…お母様、僕のことイヤ？』
「え？！そうじゃなくって…」
『……くしゅん…ふぐ……ごめんなさい…ボク悪い子…っ…い…いらない子なんだ……ひんんっ…』
「あっはっは。虐待ですか高屋敷君」
「違うよ！人聞き悪い事言わないでください！！…あ、あのね智美ちゃん！僕そんなつもりじゃなくって…あーごめんねごめんね？泣かないで？ね？」
『…でも、だって…だって……えう…』
「おやおや可哀想に…高屋敷君、かして下さいな？私があやめてあげますよ」
「【あやす】ですあやすー！！一文字違いで恐ろしいよ！！」
「さ、いらっしゃい智美君？…よしよし…良い子ですねえ〜…」
『ひぐ…えっく……悪い子だもん…』
「そんな訳が無いでしょう？智美君はとても良い子ですよ、それにとっても可愛らしくて、良い匂いがして、暖かくて、髪の毛もふわふわで…ああ、まるで天使の様ですねぇ……大好きですよ、智美君」
『…ホント？お父様、ボクのこと好き？』
「ええもちろん！チョコレートシロップのかかったヴァニラアイスよりもとびきり軽く焼きあがったハニーレモンパイよりも、イチゴのショートケーキよりも。ずっとずっと食べてしまいたい程大好きですよ」
『ホント？！ホント？！ホントにホント？』
「ええ、ええ、そうですとも。ねえ高屋敷君？」
「う、うん！僕も智美ちゃんのこと大好きだよ！！」
『でも、だって、だって…さっき、ボク要らないって』
「あれは宇宙からの電波ですよ」
「え゛。……うん、そう…電波」
『…でんぱ？』
「そうですよ、高屋敷君…お母様は人外の虫けらですので、偶に宇宙の意思に操られたりするのです。ねえ？」
「はーい！ゴミ虫でーす♪…………死にたい」
『じゃあ、じゃあ、お母様もボクのこと好きなの？』
「うんうん！大っ好き！！あそだ、家庭科室でクッキー作ったげるね！」
『クッキ？』
「うんうん！他にも智美ちゃんが好きなものなんでも作ってあげるよー。ね、ね、いいよね安西センセ？鍵開けてくれるよね？」
「ええ、構いませんよ」
「よかったーありがとセンセ。じゃ行こっか智美ちゃん、一緒にクッキー作ろうねー？」
『うん！！お母様だーい好き★』
「僕も智美ちゃん大好きだよ♪」
「…高屋敷君」
「え？」
「良妻賢母ですねぇ」
「褒められても嬉しくねえよ！！」
『お母様りょうさいけんぼー』
「あ…智美ちゃんに褒められると嬉しいかも……っていやいや違う！違う違う違う！！妻じゃない少なくとも安西センセの妻ではない！！！しっかりして僕！！」
「高屋敷君、何を一人で騒いでいるのですか？ほら、家庭科室へ行きますよ」
「あああ安西先生お願いだからそんな穏かな顔しないで！いつもの薄ら笑いを浮かべて人を殺しまくる安西先生に戻って！？そうしないと僕はなんだか取り返しのつかないことになりそうな気がするのお願い普段の殺人狂な安西センセに戻ってくださいぃー！！」
「…高屋敷君、クッキー作りに欠かせない延ばし棒というものはですね、大理石で出来ているのです」
「いやそんな事聞いてないから早くその父親面を元に戻して…」
「だから、撲殺には最適なんです」
「え」

（…ズル…ずッ……ズズッズズズ…）

『…お父様？』
「ん？何ですか智美君？」
『どうしてお母様をひきずってるの？』
「…お母様は、自分で歩けなくなってしまったのです」
『そうなの』
「ええ、ですから、運んであげているのですよ」
『お父様やさしいね！』
「ふふっ…ええ、お母様も喜んでくれているでしょうね」