『ねーお父様?ボクおっきくなったらお父様と結婚したいのー★』
「ふふっそうですねえ…大きくなったら、ね」
いい加減にしてよ!!
「ん?」
『なにーお母様?』
「なにじゃないよ!ベタベタしすぎだって言ってんじゃん!!」
「ああ、焼き餅ですか高屋敷君」
ふざけんな逆ですよ!もう(外見は)十六歳なんだから、智美がベタベタしてると僕が安西先生にくっついてるように見えて不快なんです!!不愉快!!』
「良いじゃありませんか、私と智美君は仲良しですものねえ?」
『ねー★』
「バカップル親子が…」
「あ、高屋敷君申し訳無いのですけれどMON消しゴム大判と0.3mm Bのシャ−プペンシルの芯とスティック糊を買ってきてはくれませんか?…あとハムを」
「ハムを?!ハムを何に使うの!?」
「そればっかりは言えません」
「言えない様な事に使うんですか!?」
「兎に角、お願いしますね」
「えー…めんどーい…」
お願いしますね?
「…行ってきます」
『気を付けてね、お母様ー★』


―――――――――――――――


「ただいまー。もー!コンビニくらい自分で行ってくださいよ、車あるんだからー…って、何これ…血生臭い」
「そうですか?」
「まあいつもの事だけど…僕掃除してあげませんからね。あれ?智美ちゃんは?」
「…何処かに、行きましたよ」
「あ、上着置いてある…着てかなかったんですか?」
「…必要ありませんのでねえ…」
「必要って……どこに、行ったんですか…?」
「…」
「安西先生、そのフォークは…」
「…」
「その唇についてる血の様なものは…」
「…悪の味がして…実に甘美でしたよ」
「まさか…食べたんですか?」
「……あんまり可愛かったから、つい…」
ああああ安西先生なんてことを!!吐け!今すぐ吐けー!!
「苦しいですよ高屋敷君…それに、吐いた所でどうにもなりませんよ…」
いいから吐けー!!!


『ただいまあー★…あれ?お母様お父様…喧嘩しちゃ駄目ですよー?』


生きてたー!?!
『ひ、ヒドイ!!生きてちゃ駄目なの?!』
「お帰りなさい智美君、おつかいありがとう御座いました」
「うおお?!アンタなに普通に答えてんの?」
『書類ね、ちゃんと氷室さんに渡せたのー』
「良い子ですねえ…それじゃあハイ、ご褒美ですよ」
『わあウサギの前足!ボクこれお守りに欲しかったのぅー!!』
「あああの血の池はウサギのだったんだ?!なにコレ僕とんだ道化じゃん!!」
『あー!お父様このお菓子人工着色料と甘味料入ってるから食べちゃ駄目って、自分で言ったのにー!!』
「体に悪いのですものねえ、老い先短い私は食べても良いですが君は駄目ですよ」
「血の様なものも悪の甘美な味も人工着色料と甘味料の話かよ!チクショウ大げさな言い方すんなよ!!」
「高屋敷君、さっきから騒がしいですよ?少しは褒めてあげたらどうなんですか」
『どうなんですか?』
「この野郎…誰がそうさせてんだよ…」
「さあ、誰の事です?」
「ち…ち、ちくしょおおおおおーーーーー!!!バカバカ死んじゃえヘドロ教師!せいぜい息子とイチャイチャしてろやショタコン教師!近親相姦!!死ね!!!


ガララバシャーン!!


「おやおや、随分とまあブチぎれたものですねえ…監視カメラを回しておいて良かったですね、後でお仕置きの材料に使いましょう」
『お父様ぁ…お母様ほっといて良いの?』
「んー…まあその内帰ってくるでしょうし…。ん?…そういえば息子とイチャイチャ…認めてたんですねえ、父親と」
『仲直りしなくちゃ駄目』
「あー…面倒くさいですねえ…」
『じゃあボクカスガイになるよ?子供は親のカスガイなんでしょ?』
「智美君……君は本当に良い子ですねえ…正直私の子供とは思えません」
『ボクはお母様とお父様の子供だよ。だからお母様とお父様が仲良くしててほしいの』
「ええ、そうですね。…解りました、戻るよう説得しに行きましょう」
『ホント!?』
「ええ、でも一人だときまりが悪いですから…一緒に来てはくれませんか?智美君」
『うん!お手伝いするのー!!』
「ふふ…ありがとう御座います。行きましょうか」



―――――――――――――――



「…ああ、やっぱり屋上でしたか。君の行動は簡単に読めて楽ですねえ」
「悪かったね!!…なーにしに来たんですかー変態教師ー?僕の手なんて借りずに歪んだ愛情注いで歪な関係結んでればいいじゃないですかー?」
「(…後先を考えずに話す子ですねえ)」
『お母様ぁ…』
「へー?智美ちゃん連れてきてー子供で釣ろうってんですかー?やだやだコブ付き男」
「高屋敷君…君に戻ってもらわなければ子育てなど出来ません、私は笑っている子供は好きですけれど泣いている子供はウザいので嫌いなもので」
「いやな大人だなあ!教師やめろよ!!
「戻らないと智美君の首を切り落としますよ」
「わー!わー!帰る帰る!母親役続けますからああ何処から出したんですかその日本刀はー!?」
「最初から素直にそう言えば良いのですよ」
「言えるかバカ!!…ちょ、早く智美ちゃん放してよ?戻るって言ったじゃん」
「…」
「え…ちょっと……なんで黙ってんの?と、智美ちゃんも逃げなよ!?なにしてるの?!」
『…だって、身体、動かないんだもん…』
「え?」
「いやあ…こうやって智美君を腕に抱いていると、本当に小さくて可愛いですねえ……まるでお人形さんのようです」
「と…智美ちゃん!!逃げて!こっちにおいで!?」
『無理なの…ボク、お父様の言うことに逆らえないの』
「そう、智美君は私の可愛い可愛いお人形なんですよ」
「!…そうやって洗脳したんですね」
「人聞きが悪いですねえ…教育ですが?」
「っ…!!智美ちゃん、いいんだよいうこと聞かなくて!だから、こっちおいで?!」
『…あ…』
「ふふっ……無駄無駄、無駄ですよ」
『あ、あ……お母様、ボク…ボク、お父様のいうこと聞くのがすきなの。うれしいの。しあわせなの』
「智美ちゃん!?」
「ほら、言ったでしょう?智美君は私の思い通りに動く事を望んでいるんです……さあ智美君?お父様が斬り易い様に跪いて首を出して……動いては、いけませんよ?」
「やめてください!!」
『…おか、さま…?』
「…何か言いました?高屋敷君…」
「やめて…殺さない、で…。智美ちゃんを、殺さないで…お願いだから」
「ふうん?成程、母の愛ですか……ま、良いでしょう」
「じゃ、じゃあ智美ちゃんを放してよ!」
「ただし、それがどれ程の愛か気になるので試してみます。…そうですね、では…」
「え…?」
「代わりに、君の首を貰いましょうか?」
「!?」
『…お母様』
「どちらを選んでも良いのですよ高屋敷君?麗しい親子愛で死ぬも良し、本能的な自己愛で死ぬも良し…君次第です。どうします?」
「う…あ…」
『お母様…いいの。ボクのコト気にしなくていいの……ボク、ボク、お母様のこと好きだから…死んで欲しく、ないの…』
「おやおや、こちらも素敵な親子愛ですねえ〜…」
「………いいよ、殺して…僕が死ぬから、智美ちゃんは…」
『お母様ダメ!!』
「あっはは!良いお母さんですねぇ高屋敷君!?ふふ、ははは…あはははは!!」
「悪、魔……やっぱり先生に、肉親の情なんて…」
「肉親?何ですかそれは?自分以外は皆他人ですよ」
「……」
「さあ、下らない問答はこれで御仕舞いです。………さようなら、お母様?」
『お母様!!』




「…っ!!」




―――――――――――――――


『…?』
「…あれ?」
「さっきも言ったじゃありませんか…私では、子育てなど出来ないと」
「え?え?殺さないの?日本刀を放り捨てたのは殺意が無いって意思表示?」
「君を呼び戻しに来たのです、殺してしまっては本末転倒でしょう?」
『お父様…★』
「ん?ああ、智美君…殺さなかったのは愛故にとかそんなつもりは全然無いのですけれど、君が家族愛に感動しているようなので黙っておきましょうねえ」
「思いっきり口に出てますけど、いいんですかセンセ?」
「良いんですよ、もうどうでも。さあとっとと進路指導室へ帰りましょう…長いんですよ、今回」
「今回?」
『今回ってなにー?』
「…いえ、別に…良いからもう本当に早くして下さいな」
『はーい』
「あ…智美ちゃん、ちょっと先行っててくれる?僕センセとお話あるから…」
「まだ手間を取らせるのですか高屋敷君。本気で殺したくなってきてしまいましたよ」
「と、智美ちゃん先行ってて!!すぐ済むから!ホントマジすぐ終わるから!!!
『はーいお母様ー』
「…で、何ですか高屋敷君?正式に籍を入れて欲しいのですか?」
「もうツッコむの疲れたからそういうのやめて。…そうじゃなくてさー…さっきの智美ちゃんのことでー!」
「はあ、何です?」
「あのさーセンセー…さっき智美ちゃんが言ってた台詞、あっきらか得ろゲだったんですけど…まさか」
「いやですねえ…そんな訳が無いでしょう高屋敷君。人を性犯罪者のように言わないで下さいな」
「だってー…」
「君だって調教された訳でもないのに、私の言うことをきくのが好きじゃありませんか。母親似ですよ」
「えええ!?別にそんなつもり無いよ!!」
「というか、君は人に命令されないと何も出来ない何も考えられない、操り人形なのですよ。せいぜい御両親の敷いたレールの上を歩くことですね〜」
「ちっ違うもん!!ちゃんと僕は考えて行動して…」
「洗脳された人間は、皆そう言うのです。統○教会にでも見学に行きましょうか?」
「いらないよ!!て言うかそんな話じゃないんですって!僕はねー自分のクローンな智美ちゃんが可愛そうです!何やったんだか知らないけど妙な刷り込みされてセンセの言うことに逆らえなくなってるんじゃないですか!!どうしてそういうことするかなあ?!いくら成長スピードが異常に早いっていってもまだ智美ちゃんは子供だよ!?生まれて三日だよ!?そんないたいけな子供を安西先生はー!!」
「…長い」
「え?」
「しつっこいんですよ高屋敷君…もう良いです。母親の代わりなど幾らでもいるのですから」
!!?先生やめて許してくださあげがばばばばば!!?!?!!



―――――――――――――――



カララ…


『あ!おかえりお父様ー★……お母様は?』
「あとで、探しに行きますよ」
『?』
「智美君はどんなお母さんが良いですか?私としてはそろそろ女性の方が…」
『お父様…お母様は…』
「片親は難しいですからね…智美君の為にも早く見付けなくては、いけませんね?」
『お父…様』
「君の為ですよ、智美君。…解るでしょう?」
『………うん』





次の日、お父様が女の人をつれてきました

お母様は帰ってきませんでした

女の人はボクにやさしくしてくれます

でもボクはお母様にあいたいです

お父様、ボクのお母様は一人だけなの

だから、あの女の人をお母様なんて、よびたくないの

お母様、お母様

早く帰ってきてね、お母様

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