ガララ



「安西先生!こんにち…わ?……わー……」
「ああ高屋敷君ですか、いらっしゃい。机の上にイチゴ大福がありますからお食べなさい」
「ん…食欲無いからいい…。って言うかなにしてるの?」
「見ての通り、人を手頃な石で殴り殺しているのですよ」
「手頃な石が墓石ってところが意味解んないけど、なんかつまんなそうに殺してますね。その人誰?なにしたの?」
「他校の教師なのですが、これが本当につまらないのですよ…命乞いの台詞もボキャブラリーに乏しかったですし」
「もう死んでるんだからやめなよー。何回墓石振り下ろしたんですか?もうグチャグチャだよ?」
「そうですねえ…これ以上面白くなる見込みもありませんし、この辺にしますか。…高屋敷君、そこの麻袋とってくれます?」
「これ?はいどーぞ」
「んー…入れ難いですねえ……ぬるぬるで手が滑って…」
「僕袋の口開けといてあげますよー」
「それはそれは、ありがとう御座います。高屋敷君は本当に良い子ですねぇ…頭を撫でてあげましょう」
「いらない。先生の手血塗れだからイヤ」
「そうですか?よい…っと……さて、私は焼却処理場に行きますけれど、高屋敷君はどうします?」
「ついてきますよぅ」
「では床の掃除は後にしましょう、いらっしゃいな」
「ねーさっきの話だけどさ」
「ん?」
「手、洗ったら撫でてね?」
「ふふ…はいはい、そうしましょう」



―――――――――――――――



「…あれー?焼却炉新しくなった?またでっかくなった?」
「そうらしいですねぇ。…あ、美化委員さん、この死体を任せても?」

『はい?…あーすんません、今ちょっと余裕ないんすよねー』

「おや、そうなのですか?」
『今日は随分死体が多くて、焼却炉をフル稼働でも間に合わないんっすよ』
「そうですか…困りましたねえ、ではどうしましょう?」
「園芸部にあげる?」
「北海道は未だ冬ですし…温室も、植物より死体の方が多い状態だと前に聞きましたし」
「そっかー…」
『ホントすんません』
「いえいえ、気にしなくて良いですよ。他を当たりますから……では」
「どうするのー安西センセー?」
「重いですしねえ…どうしましょうかねえ…ああ、持て余してしまいました。生前から邪魔臭かったですがそれ以上です…どこに置いておきましょうか」
「ほっといたら腐っちゃうよ?うちの学校ヒーターガンガンだもん」
「死体だから困るのですよ、生きていれば腐ることも置き場所に困ることも無い筈です。…まあ稀に生きていても持て余す人間もいますが。高屋敷君のように」
最後のはどういう意味ですかー?!
「あはは、まあまあ…」
「ひっく…えぐう…ひどい、ひどいぃー…」
「と言う訳で、取り合えず生き返らせましょうか」
「え…マジでー…?……やだなあ、気持ち悪いなー…」
「えー…と…取り合えずこれを飲ませれば……あ、飲ませようにも頭部がありませんね。…えい」
「うわグロっ…傷口の食道から直に突っ込んでるよ……えーマジ引くんだけどー…」
「高屋敷君、一体何を女子高生のような口調になっているのです?」
「う?そう?…つーかそんなことよりセンセー…その人もう生き返ってるの?ビックンビックン痙攣しててキモーい」
「ええ、もう生き返っていますよ。…ほら、もう完全に生き返りました」
「え?」
「え?」
「…潰れた頭部は、そのままなの?」
「ええ、そうですが?」
「…おえー…キモ…」
「大丈夫大丈夫、生前からキモい人でしたから」
「全然慰めになってない!わーこっち来たこっち来た!!いやああ変な体液垂れてるー!!」
「高屋敷君危ない!その体液に触れると君もゾンビ化しますよ!!」
生き返ってないんじゃんゾンビじゃん化け物じゃん!!やだやだ助けてセンセぇー!!
「どうぞ高屋敷君、ロケットランチャーです」
「わああリアルバイオハザードだあー!!こんな銃器僕が扱える訳ないじゃんかー!!」
「ちっ…本当に役立たずな子です。貸しなさい!」
「え、あ、ま…待ってその至近距離じゃ僕まで巻き添えにズドゴオオォォォンン!!!おぐべっはああぁぁぅっっ!!!?



―――――――――――――――



「…ふう、間一髪でしたねぇ〜…」
「ぁ……あ、あう………僕の」
「あのまま野放しにしていたらとんでもない事になっていましたね」
「…僕の腕が、無い…腕が無いよ…?……痛い、よ」
「でももう大丈夫ですね、ゾンビは木っ端微塵です」
「………木っ端?」
「ええ、飛び散ってますよ」
「飛び散って………どこに、付着したの?」
「…ん?」



『いやああああ!!顔が、顔が腐ってくよー!!!』ガリブチッッ!ブシュウウウーー!!『……肉…肉が、食い…た……ウガアアアアアアア!!!!』『うわああやめろ笹原!!美春を放せ!美春を食うんじゃねえよおおー!!』『ウオオ…お、オオオ……ア゛ーーー…』『来るな!来るんじゃねえよ!!』ガキゴリゴリバキボリ…『痛いよ…裕司君、私、腕が痛いよ…腕が……裕司君の……裕司君の腕が食べたいよー!!』『香苗?!よ、よせ…止めろ……ぎゃあああああ!!!』『ア゛ア゛ア゛…ア゛ーー……(ドゴチュ!!)アゴオォッ!!』『(メグチャ!ドゴン!!)死ね!死ね!!お前なんか孝治君じゃない!!死んじゃえ化け物やろー!!!(ドチャベゴバギイィッ!!!)』



「…」
「…」
「体液…感染…」
「…高屋敷君」
「え?」













「逃げましょうか☆」
生きてる人間殺すのは好きだけど死んだ人間はめんどくさいってのかよこの悪魔ー!!!

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