「おや?…高屋敷君?」
「っ…!…なっなにっ?!安西…先生っ……重…」
「何を運んでいるのか知りませんが、重くて大変でしょう?寄越しなさいな」
「いらないですもん!これくらい持てるからぁ」
「意地を張らないで…ほら、持ってあげますから貸しなさい」
「わあーん!なんで持てないのー?!僕の想像の中では僕は5トントラック持ち上げてるのにー!!
「それは妄想というのですよ…」
「違うよ違うよ!僕最近筋トレしてるもん!もうすぐムキムキになるんですー!!」
「バキじゃあるまいし、筋肉にも限度があると思いますが」
「ふんだ!そうやってバカに出来るのも今のうちですよ!!一ヵ月後には筋肉ムキムキマッチョになってるんですからねーだ!!」
いい加減にしなさい高屋敷君!!
ヒッ!?!
「君は君自身の良さというものを何も解っていません!どうして自分の良い所に見ないふりをするのです?人を真似たところで、それが君の幸せに繋がるとは限らないでしょう。ねえ、高屋敷君?君には見えていないのでしょうが、私や周りの人達は、君の良さを君以上に知っているのですよ?他人を見るより、自分を見て下さい、高屋敷君……お願いですから、どうか…」
「あ…あ…あう……ひぐっ…ご、ごめんなさいっ…えぅ……ごめんなさいごめんなさいー…」
「……高屋敷君、先生は怒っている訳ではないんですよ」
「ひっく…ひく…?」
「君に、何とか幸せな人生を送ってほしい…それだけなんです」
「っ!!…安西先生…!」
「怒鳴ったりして、すみませんでしたね……さあ、こっちにいらっしゃい?」
「う…うわああーん安西センセー!!僕、僕、間違ってたですよー!!」
「ああ、よしよし…大丈夫ですよ……間違いなら正せば良い。若い君には、それが可能ですから…ね?」
「ひぐ…えぐぅ…僕、がんばります…絶対絶対がんばるから!!」
「良い子ですね、高屋敷君…さあ、ご褒美に飴玉をあげましょう。お口を開けて下さいな」
「あー…ん………えへへ、おいしいですセンセ。ありがと」
「…」
「センセ?」
「………ねえ、高屋敷君?もしかしたら私は、とてもエゴイストな理由で…君にあんなことを言ったのかもしれません」
「?…あんなことって…なんのこと?」
「本当は解っているんです。こんなに可愛い君も、いつかは大人になって…」
「なに言ってるの?なんのお話してるの?」
「…私は、君に…変わって欲しくなかったのです。……このまま何も変わらなければ…このまま時間が移ろわなければ……君はどこにも行かずに可愛いまま、私の傍に…」
「…安西、先生?」
「高屋敷君、高屋敷君、君もいつか卒業してしまうのでしょう?私をこの学校に残して、君は大人になるのでしょう?そして私を忘れてしまうのでしょう?」
「先生…僕は、そんなこと…忘れるなんて、そんな…」
「そうなるくらいなら、いっそ」
「え」









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「って流れだといつもは僕、殺されるのに、今回は殺さないんだねセンセー?」
「ワンパターンは害悪ですしね」
「まあいいんだけどねー!死なない方が僕嬉しい♪」
「…高屋敷君、君が大人になってしまっても…」
「え?…あ、だいじょぶですよう安西センセ!忘れる訳ないです!」
逃がしゃしませんからね?
「ヒッ!?ヒィイイイイイーー!!!!

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