「いやあ、やっぱりハイキングは気持ちが良いですねえ高屋敷君!」
「全然気持ちよくない。なにがハイキングなんですか雪山登山じゃん!!
「?ハイキングじゃありませんか」
「そりゃ安西先生にとってはね!!大体なんでスーツなんですか?!寒くないの?」
「高屋敷君、あまり大きな声を出すと雪崩が…特に今年は暖冬ですし」
「あわわ…って言うか帰ろうよ、帰れば雪崩の心配も無いんですよ?」
「ですが、冬場に部屋に篭ってばかりいると身体に悪いですよ?出掛けなければ」
「出掛ければいいの?」
「ええ」
「それじゃあね安西センセー、あのね駅前にラーメン屋さんが出来たんだって!食べに行きましょ?」
「ラーメン?ラーメンというとあの…紫色のですか?」
ごめんわかんない!安西先生のラーメンをわかってあげられない!!」
「ですからあの、紫色でプルプルした中にオレンジ色の粒粒が入っていて時々人を襲う…」
忘れて!?お願いだからそのラーメンのことは今だけでも忘れて!!
「違うラーメンがあるのですか?」
「えっとね、中国で出来た麺類なんですけどー日本に入ってきたら結構別の食物になったですよ」
「ほほう」
「味は大体味噌・醤油・塩・豚骨かな?バターコーンとかもあるけど。おいしいよ」
「へえ…」
「札幌にはラーメン横丁とかあるんですよぅ!行ったことないですか?」
「いえ、残念ながら…」
「んうー…ホントに変なところで常識無いんだからー。まあいいや、早く行きましょ安西センセ!!」



―――――――――――――――



「…んで、センセなに味にしますかー?」
「あんかけ焼そばが食べたいのですが」
「どうしてラーメンを食べないの?!空気読めよー!!」
「じゃあ…醤油で」
「醤油ですね!じゃ僕は塩にしよっかなー。店員さん醤油と塩いっこっつお願いします」
「あ、すみません、水お代わり貰えますか。……ありがとう御座います」
「十分くらいで来るかなー…。ねねね先生、最近なんか面白いことあったですかー?」
「んー…面白くはありませんが、変わったことならありましたよ」
「なに?」
「それが、下着を盗まれたのです。十八階なのですけれども」
「え…」
「肌に直接着ける物ですからねえ…呪殺目的か、あるいは…DNAの入手が目的かもしれません」
「いや、それは…」
「そういえばサドルも盗まれました。学生時代の物ですから、使っていないので実害はありませんが」
「あ、あの、センセ?多分それストーカーじゃない?」
「違います」
「でもサドルとか下着とか…ストーカーらしいもんばっかじゃん」
「私のストーカーは全員把握していますよ。全員分調べましたが、自宅のどこにもかくされてはいませんでした」
「ええー…どっちが犯罪者だかわかんないや…」
「仕方が無いではありませんか…両親の出した、一人暮らしを許可する条件がそれだったのですよ」
「ストーカーを監視することがー?」
「一応刺されたりしますしねえ…実家では使用人がやっていたのですけれど…」
「色々大変なんですね、安西センセ。…あ、来た来た♪」
「…?…」
「ほえ?どうしたんですかセンセ?食べないの?」
「だって…ラーメンは食べられませんよ?」
「だからぁ、これはセンセの知ってる紫色でオレンジ色の粒粒が入ってるラーメンじゃないの。ほら、ちゃんと麺入ってるでしょ?よく見てよー」
「高屋敷君こそ何を言っているのです?紫色のプルプルが入っているじゃありませんか。やっぱりラーメンとはこれの事なのでしょう?」
「だーかーらー!もう、さっきからなに言ってるの安西センセったら!ちょっとその丼貸して!ほらこれが麺…………………え?」
「どれが麺ですか?」
「うわ…うわ、うわうわうわうわうわあああああっ!?!
「高屋敷君、ラーメンとは何ですか?」
「あああ…紫色で、プルプルした中に、オレンジ色の粒粒が入っていて……」
「時々………人を襲う」
「ひいっ!?!イヤイヤ止めてわぎゃあああぁぁーー!!!



ぬぶり…ぬぼ、ずもももももももも!!!!












「…高屋敷君?」
「…」
「………溶けちゃいましたね」
「…」
「…ねえ、高屋敷君」
「…」
「結局、ラーメンって何ですか?」

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