カララ…



「高屋敷君、ちょっと」
「ふえ、安西先生。なんか用?わざわざ教室来なくても、後で進路指導室行ったのにー」
「バレンタインのお返しに、君を焼肉屋に連れていく予定だったのですけれども。すみませんが、その時間がとれそうに

ありませんのでね。そのお詫びに」
「は?なにこの紙束…って一万円札?!な、なにこれー!?こんなのドラマの中でしか見たことないー!!」
「今日使う予定だったのですが、丁度使わなかったのですよ」
「えー…こんなにいらないですよぅ…一枚だけ貰っときます。友達と行こっと」
「すみませんね、高屋敷君…お勧めの店があったのがですがねえ」
「う、うん。気にしないで(人肉が出てくる店には行きたくないなんて、言えない)。…それより先生どうしたんですか?なんかダルそう」
「………今日はホワイトデーでしょう?」
「うん」
「万札ばらまいて済ませようとしたんですけれどね、『それよりも一日デートがイイ★』とか言われちゃいましてね…」
「ああ、女子にいっぱい貰ってたもんね。……全員と?」
「………」
「うわー…頑張ってねセンセー」
「まあ、一人一人やっていっては流石の私でも死にますし…全員一度に済ませようと思ったのですが……それはそれで死ぬのではと…」
「先生震えてる!!大丈夫!?」
「ふふ…今は大丈夫ですが、今日の夜にはどうなっているか分かりませんねえ…」
「そんなに弱ってる安西先生始めて見た気がしますよー!!」
「なんでこの私が、高がバレンタインのお返しで一山幾らの相手をしなくてはいけないんですか?自慢じゃありませんが、デート一回の料金は五百万とってるのですよ?」
「え…ぼ、僕に言われても…」
「因みにベッドは別料金です」
「うん、平均幾らかは言わなくていいからね」
「まあ幾ら注ぎ込まれても、寝たくない相手とは寝ませんけれど」
きーこーえーなーいー!!僕にはなんにも聞こえないー!!
「ふう…」
「…あ…気を付けて行って来てね、センセ…」
「ええ、なるべく死なないように……ね」


(…カララ…ピシャン)





「…大丈夫かなあ…」





―――――――――――――――




カララ…


「…あれ?どうしたの、安西先生。なんで帰ってき…た……の……………?」
「………………だって、あんまりにも姦しかったので…」
「…だから…全員殺したの?」
「………はい」
「……そっか…」
「…」
「疲れたよねセンセ、お風呂屋さんいこ?」
「…ええ」
「血糊落とさなくちゃいけないしさ、ね?」
「……高屋敷君、私は思うのですよ」
「なあに?」
「おばさんになる前に殺して良かった。…と」
「…そう」

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