―地下87階―――――――――




なんとかここまで辿り着きました

途中何度も何度も何度も

『なんでこんな事やってるんだろう』

って思ったんですけど

なんとか報われそうです

これでセンセが更に下の階へ行っていたら

その時はもう帰ろうと思います

ホントなんでこんな事やってんだろ?



「っはあ…はあはあ……し、死ぬかと思った………って言うか実際68回くらい死んだ…
 ………センセ、居るのかな…?
 


(ギギ…ギギキキキギキイイィィィィィーー…………ガシュン!ガシャアアァァンン!!!)



 あ…安西センセぇー!!どこですかー?!


「…」
「あ」
「…」
「いたー!!もうそんなとこにしゃがみ込んでなにやってんですか?!早く帰りましょ?ねえ、上に戻ったら一緒にペットショップ行きましょ?何百軒でも付き合ってあげるから!きっと可愛い猛禽類一杯いますよ。だから行こ?」
「……いえ、気遣いは嬉しいですが…結構ですよ」
「な!?なんでですか?!僕こんなに頑張ってやっとここまで来たのに!努力メチャメチャ無駄になっちゃうじゃないですかー!!」
「…」
「センセぇ………ね、僕のことももう可愛いと思わない?」
「…」
「ネコ耳もつけてあげるよ?ハムスターみたいな可愛いしぐさもしてあげるよ?抱っこもしていいよ?それでもダメ?」
「もう…もう良いのですよ、高屋敷君」
「先生!!」
「見付けたのです、本当の可愛さというものを」
「…え…」
「見て下さい、この……最低最悪の、奇形獣を」
「…っ!!?」


(【ゴゴゴギギ…ィイキキケキギガガガゴオオオォォ……イギィ!!アゴグゴガアアアアアアァァァァ!!!】)


「ほら…こんな肥溜めが似合いの腐れた生き物です。赤紫色の悪血を吐き散らかし、腕の数は百足のそれ、黒褐色の鱗にまみれた皮膚から生える触手は腐懐の液を垂れ流して絡めるモノを皆悪臭を放つ汚泥に変える蠢いては体液を噴出しその見苦しくブクブク太り崩れた自らたる肉の塊をぬらぬらてらてら光らせて聞くもおぞましい悪夢を歓喜と共に叫びがなる神に呪われた白痴のガキですよ!!
「う…うわあああああああああああ!?!ああ!ああああああああああああぁぁあぁあああぁあああーーーーーー!!!!
「おやおや…何処へ行くのですか高屋敷君?さあ、もっと近づいて…君の可憐な肌が粘液で濡れ光るまでに…ねえ?」
「ひいっ!?あ……放して…いや…やっ…やめっ、てくださ……いやだぁ!!いやいやいやいやいやあああぁぁーーー!!
「ふ…ふふ…はは!あはははははははははははは!!」
「!?」
「ああ…可愛い。可愛いったらありませんよ」
「…狂ってる…どうしてですか先生…?どうして……人を虐めて喜ぶの?泣き顔を見て笑うの?」
「ん?何か勘違いをしていませんか?」
「え…?」
「私が可愛いと言ったのは、君ではありません。君の目の前に居る生きる価値の無い屑にですよ」
「…?…」
「そう、生きる価値の無い…生きるのに相応しくない…生きたゴミ。それでも私は、この化け物を愛しいと思うのです」
「…なにを…言ってるんですか」
「私は、とてもとても大事な事を…忘れていたのですねえ?」
「…」
「強者は弱者を愛玩するものです。弄び、自己の戯れの為に可愛がる」
「…先生?」
「自分より格下の者を寵愛する、それだけで良かったのです。三角形の面積など、仕草の可憐さなど、美しさなど、どうでもいい事だったのですね」
「…安西先生?……ソレに触ったら…」
「平気ですよ。ゲルベゾルデ君は、私を溶かしたりなどしませんものね?」



腐った肉の管に似たゲルベゾルデ君の触手に

安西先生は白い腕を伸ばして

優しく抱き寄せると、そっとキスをした

その暖かいキスは、ヴェロニカちゃんにしたのと変わらなくて

ゲルベゾルデ君の触手も、甘えるように擦り寄って

その幼い甘え方は、ヴェロニカちゃんとそっくりで

満足気な慈愛の微笑を浮かべた安西先生を見て僕は

歪んでる気もするけど

ペットと飼い主がお互いに幸せなら、まあいいんじゃないかなあ

そんな事を考えていました



どうでもいいけどこの考え、そこらの三流官能小説みたい





「…で、安西先生。もう気ー済みましたか?」
「ええ、すっきりしました。偶には壊れませんとね」
「はあ…僕、センセがマトモなのかそうじゃないのか未だにわかんないですよう…」
「私は狂気を自覚しているのです。それだけですよ」
「……タチ悪…」
「まあ安心して下さいな?スランプはすっかり立ち直りましたからね。…高屋敷君も、とっても可愛く目に映りますよ」
僕はグロ生物じゃないよ?!
「解っていますよそんなこと」
「ならいいですけどー…僕は正直、こんなの可愛いと思えないですー!」
「…いけませんねえ〜高屋敷君…外見だけで判断してはいけませんよ?…あ、良い事を思い付きました」
「へ?」
「高屋敷君、このゲルベゾルデ君と親睦を深める為、ここに監禁されて下さいな☆」
「い…いやいやいやいやいやあーー!!絶対イヤ絶対イヤ死んでもイヤ!!お願いですからその思い付き無かった事にしてください安西センセー!!」
「お断りです。もう決定ですねえ〜(カチカチャ…ガション!!)
「うわあああなに首輪つけてんですかなんで鎖で壁に繋ぐんですかー!?!」
「大丈夫ですよ、ゲルベゾルデ君は意外と大人しいのです。そうそう食べられたりはしませんよ……………お腹が空かなければ」
「お腹空いたら食われるんじゃん!!あ…ちょ…ま、待ってください安西センセぇー!!!








(…………ガシャアアァァンン!!!

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