「…高屋敷君?」
「…」
「…凍ってますねえ…」

(ドボボ…)

「………ぅ…う……うあっちいーー!?!な、ななななにするんですか安西先生?!寒風吹きっ晒しの次は熱湯の虐待ですかー!!?」
「いえ、凍ってたので…」
「え…僕が?」
「ええ」
「……なんで生きてるんだろ、僕」
「ああ、それは当然ですよ?ちゃんと血液を一滴残らず抜いて細胞を満たす溶液もグリセリンに変えてありましたから」
「もっと生きてるのが不思議だよ!!?」
「君はいつもの事でしょう?」
「そ、それはそうだけど…」
「さてと…じゃあまあ取りあえず中に入って下さいな」
「うん…え、ちょ、なんですかほっぺた触んないでください」
「おやおや、随分冷えてしまいましたねえ〜…お風呂に入りましょうか?」
「え?いいんですかー朝風呂なんて」
「ええ、風邪をひいたら困りますものねぇ。さあいらっしゃいな高屋敷君」
「うん…ってえ?なんですかなんですかー?!降ろしてください放してなにするのー!?
「昨日の口答えのお仕置きですよ☆」
「なんで服着たまま?!なんで風呂桶に入れるのなんで蓋するのなんで上に座るのぎゃああ水が水がーー!!




―――――――――――――――




「……駄作でしたねえ、今回の小説も。借金に追われて駄作を量産する位なら内臓でも売れば良いでしょうに……あ、忘れてました」


(ガタ…)


「………」
「すみません高屋敷君、ついつい夢中になってしまって。うっかり文庫本を一冊読み終えるほど放置してしまいました」
「………」
「高屋敷くーん?」
「………」
「…んー…」

(バシャ…ズズル…ベシャドスッ!!)

「………」
「えーっと……おや、止まってますねえ」
「………」
「よいしょ」
「……っ…!?!ゲホガァッ!!ゴホッッげほ…あぐゥッ…ぁ…ゴホゴフゴホゲホがっはあぁぁ!!?
「大丈夫ですか、高屋敷君?」
「僕じゃなかったら大丈夫じゃないよ!幼児だったら五人は死んでたね!!
「なら良かった」
「嫌味で言ってんですよ!気付けよ鈍感!サディスト教師!!」
「…今、何か言いましたか高屋敷君?」
「ひっ……ぁ、い、いいえなんにも言ってないです…よ?」
「高屋敷君?所詮君は嘘を吐ける様なキャパの持ち主ではないのですよ?大人しく本当の事を言って御覧なさい?怒らないので」
「う…嘘吐いてないですもん」
「高屋敷君…」
「…う…」
「嘘を吐くのは悪い子のする事ですよ?…ねえ、本当の事を言って下さいな…絶対に怒りませんから」
「…ホント?」
「ええ、神様に誓って」
「……あの、僕、センセの事…鈍感のサディスト教師って…言いました」
ハイお仕置きですよ高屋敷君☆
ええー!?怒らないって言ったじゃないですかー!!」
「ふふふ、馬鹿な事を!嘘は嘘に隠すものですよ高屋敷君☆」
もう大人なんて信じらんないですー!
「大丈夫ですよ、子供用の仕付け鞭ですから。私の腕を信用して下さいな」
「どうしてそんな腕があるのかが気になるんですよ僕は!!」
「じゃあ、軽く二十回行きましょうか。数を数えて下さいね」
「ひっ…いやあぁぁぁ!!やめてやめて安西センセ…(シパァァンン!!)ぁい゛っ……い…だがぁっ!やだあぁぁ!!
「数えなければいつまでも終わりませんよ〜」
(シパァァンン!!)
「あぎいっ…!!ふぇ…いっ……いちぃ!!
「はい良い子ですねぇ〜☆」
(シパァァンン!!)
「はぎゃぁ…!…!!っに…にいぃー!!


―――――――――――――――


「…本当に頑丈な子ですねえ高屋敷君、気絶もしないとは…ね?」
「ぁ…ああ゛……痛い…背中が、熱い…いた……い…」
「まあ、気絶なんてさせはしませんけれどね〜」
「うぁ…あ゛あ゛あ゛ぁぁ……こ、殺し…て」
「ところで…こんな非人道的な扱いを受ける私の家と、お母さまお父さまがいらっしゃる家と、どちらが居心地が良いのですか?」
「…」
「…」
言われてみればーーー!!
「頭の悪い子ですねぇ…」
「ふんだもう安西センセなんて嫌いです!こんな悪魔の棲家二度と来るもんか!それじゃあさよならバイバイですよ!!べぇーだ!!


(ガチャバタン!!)







「…まあ、時間はかかりましたけれど。説得成功ですかねえ?」

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