(♪でーもー私たーち愛してくれとは言わーないーよー…)



「ん?高屋敷君ですか…


(ピ)


もしもし?どうしました高屋敷君、迷子にでもなりましたか

(『あ!安西先生!!今家にいる?!』)

ええ、居ますけれども

(『窓から僕見える?』)

……よく見えますよ…一体何をしに来たんですか…

(『家出したんですよ家出ー!!だから泊めてください!!』)

帰りなさい

(『ヒドいー!!』)

教師として当然の言動ですよ。早く帰りなさいな

(『ヤダ。もうあんな家帰んのイヤ!泊めてくんないんだったら暖かい食事と寝床の為に自分の体を安売りしますよ?!』)

ああもう全く全く…まあ取り敢えず待って下さいな、人に帰って貰わなくてはいけませんし

(『誰かいるの?誰ー?』)

援交相手が」

(『…』)


―――――――――――――――


「はいいらっしゃいな高屋敷君」
「ねえ、さっき出てった人、僕テレビで…」
「大人には色々あるのですよ」
「いやだないやだな!部屋中なんか湿った空気が充満してるしシーツも剥がしてあるし!大人ってこれだからイヤだな!!」
「コーヒー淹れますから、そこら辺の床に座っていて下さいな高屋敷君」
「え、あ…うん…ってなんで床に?!ソファーダメなの!?」
「砂糖は幾つでしたっけ?」
「あ、三つで……いやだからなんで床に?」
「すみません、今ちょっと豆を切らしていて…インスタントで」
「いいですよ味気にしないから…んで床は…もういいや」
「…で?どういった訳で家出してきたのです?」
「それがですねー!!もーね?酷いんですよー!!聞いて聞いて安西先生!!」
「聞いてるじゃないですか」
「ほんっと全然僕の事解ってないんですから!」
「成る程青二才ですねえ、他人が心の内を解ってくれると思っているなんて、ねえ」
「別にそんなつもりじゃないですけど、でも…」
「高屋敷君、世の中というものは兎角せちがらいのですよ。蛇使いは笛の音ではなく笛自体の動きで蛇を操っていたり…」
「そうですよね、象が踏んでも壊れないのに人間が踏むと壊れちゃうアーム筆入れとか…」
「どうしてそんな古い事を知っているのですか…」
「さあ…なんでだろ…」
「まあさて置き、とっとと帰りなさいな。お母様方も心配なされていると思いますよ」
やーですー!!心配なんてしてないもん。してても勝手にすればいいもん」
「やれやれ…本当に困った子ですねぇ?……仕方がありません、ふらつかれて誘拐でもされたら面倒ですし。帰りたくなるまでいても良いですよ」
「ホント!?やたー!ありがとうございます安西先生ー!!」
「まあ、身の安全は保障しませんけれどねえ」
どっちの意味で?!
「んー…両方?」
「繁華街ふらついた方が安全な気がしてきた!!」
「御両親には私から連絡しておきます、良いですね?」
「センセが電話してくれるならいいですよー…ってあれえ?!なんで縛るんですか安西センセー!?
「えー…っと…鈍器鈍器……」
なに言ってるの?!ねえなに言ってるの安西先生!?
「冷蔵庫で良いですね」
「いや無理だろってうわあ持ててる!振り被ってる!!やめてください無理無理潰れぎゃあああぁぁーーー!!!(メチャグキョ!!)
「…あ、高屋敷君のお母様ですか?はい、安西です……ええその事で…はい、今私の自宅に来ていて…」
「あ゛…ああ…頭…がぁ……」
「どうやら喧嘩をなさったようで…ええ……で、ここでしばらく頭を冷やさせようと…そうでしょう高屋敷君?」
「助け…(ドカッ!!)ぁぐっっ!?
「……すみません、テレビの音声を拾ったようで。……高屋敷君?」
「………うん」
「という訳ですので、御心配なさらず。……はい…え?…あはは、ええ…勉強の方も。はい…はい、では失礼します…」

(ピ)

「ぐすん…ひぐ……っふぇ…」
「…おやおや、何を泣いているのです高屋敷君?」
「痛い」
「お腹が空いたのですか?」
「違う、痛い」
「今作ってあげましょう、そこで良い子にしていて下さいな」
「……うん」


―――――――――――――――


「ごちそう様でしたー」
「…高屋敷君、御飯を残していますよ」
「え?全部食べたけど…」
「茶碗に半粒残っています」
「半粒て!!いいじゃないですかそれくらいー!」

「高屋敷君、お米には七人の神様がいて…」
「僕は神すら超越するんです。僕の右の腕が操る二本の巨木は神を如何様にも出来るんです」
「…いけない子ですねぇ…お仕置きをしなければ」
「え゛…や…なんですか、その官能ゲームの主人公みたいなセリフ…?」
「服を脱ぎなさい、高屋敷君?」
ぎゃああマジかよいやああぁぁぁーー!!!
「まあ下着は止めにしておきましょう、猥褻物陳列罪にでもなったら面倒ですからねえ」
「え?…あの、なんで窓開けるの…?」
「では、朝まで頑張って生き抜いて下さいな」
「いやあ待ってくださいぃ!なんで僕この真冬の最中下着一枚でベランダに放り出されてるんですかー?!!」
「お仕置きだと言ったでしょう?」
虐待ですー!!
「躾ですよ」
「躾の名の下に何人の幼い命が消えたと思ってるんですかぁ!?!」
「ん?口答えですか…では、明日の朝ご飯は抜きですよ」
「訴えたら僕が勝てるんですよ?!」
「判決が出るまで君が生きていられたら。ねえ…」
うわあん待って待って安西センセ閉めないでくださいよぅー!!



(…ピシャン)

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