「…安西センセー…これ解んないです〜」
「ん?どの問題です?」
「これですよう」
「…?」
「これ」
「………こ、この問題の何が解らないのですか?」
「え、だって…2−3でしょ」
「ええ」
「引けないじゃないですか」
「…は」
「だからぁ、引けません」
「…念の為聞きますけれど…高屋敷君、0−1はなんですか?」
「引けませーん」
「………」
「なんでそんな顔するんですかー?」
「いえ…すみません高屋敷君。食材にするなんて言ってしまって…大丈夫ですよ、私が教えてあげます……一緒に頑張りましょうね」
「?はーい」



「?なんで?なんで0から1が引けるんですかー?空の籠からリンゴは取れないじゃないですかー」
「(よもやここまで出来ないとはねえ…)」
「ねえなんでー?」
「高屋敷君、数字は概念なんです。存在するしないは考えなくても良いのですよ」
「…?…」
「君は一体どうやってうちの学校に入ったんです?」
「さあ…国語で点稼いだと思いますけど」
「…やれやれ…高屋敷君、数値線を知っていますか?」
「知らないです」
「そうでしょうねえ…良いですか?こう横に線を引きます。そして真ん中に点を置いて、ここが0になります」
「…うん」
「で、右の端が1。左の端が−1」
「……うん」
「つまり、−1と言うのは0からの距離なのですよ」
「へー」
「理解出来ました?」
「はい!おおむね!!」
「おおむね…ねえ……頭が悪い子ですねえ…」
「そ、そんなあきれた顔しなくても」
「社会生活を営めるのか心配です…。高屋敷君、職に困ったら私の実家でメイドでも」
「本気で心配しないでくださいー!嬉しくないよ!!」
「あ、馬鹿でもお腹は空きますよねえ。今作りますから、大人しく座って何もしないで下さい。皿も運ばないで下さい。箸も並べないで下さい。どうせ転んで割ったり目に突き刺したりするのですから」
僕そこまで馬鹿じゃないですよー!!

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