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 ガララ 
 
 
「おや高屋敷君、いらっしゃいな」 
「安西先生、今日は愚にも付かない事を教えてくれるって言ってましたけど…」 
「ええ。そうですねえ…高屋敷君、主に東洋で言う所の地獄には大きく分けて二種類あります。知っていますか?」 
「熱いのと寒いののことですか?」 
「その通りです。正確には八熱地獄と八寒地獄」 
「それがなんなんですかー?」 
「今日は、もし地獄に落ちた時どちらの地獄を選ぶべきか。を教えてあげましょう」 
「僕地獄なんて落ちないし。必要なのは安西先生だけじゃん」 
「まあまあ、陰でなにをやってるかなんて隠さなくても良いのですよ?」 
「なんもやってないですったら!」 
「まあきっと選択権なんて与えられないのでしょうが。ここは仮定の話ですからね〜」 
「一応聞いておこうかなあ…あんな学校に在学してる身だし」 
「それでは高屋敷君、人は熱いとどんな感情を持つでしょう?」 
「え?えっと…イライラ?」 
「正解です。無い頭でよく答えてくれましたね」 
「褒めたくないなら褒めないでください!!」 
「ははは。…つまりは、熱いと人は怒りを抱きます。時に高屋敷君、君は数学が出来ませんでしたねえ?」 
「む、なんですかいきなりー…出来ないですけど」 
「では、その事を誰かに『お前の努力が足りないからだ!』と言われたらどうしますか?」 
「挑発されたらですか?なにくそ!と思って頑張ります」 
「それはどんな感情ですか?」 
「…怒り。かなあ?」 
「そうですね、まあ大体そんなところでしょう。つまり、怒りはエネルギーに変換されるのですね」 
「うん」 
「逆に、寒い時は人はどんな感情を持つでしょう?」 
「…?」 
「ん、ちょっと難しかったですかねえ…では、寒いと人はどんな行動をとるでしょう?」 
「うーん…動かない?」 
「ええ。まあ行動をとらないと言った感じではありますけれど」 
「感情はどうなるんですか?」 
「そうですねえ〜…絶望。ですかねぇ」 
「僕が良く抱くやつですか?」 
「よく解ってるじゃあありませんか、感心感心」 
「寒いとエネルギーは…」 
「精々、なるべく使わない様に節約する程度ですね。生み出される事はありません」 
「でも、熱くてもダラダラしちゃうじゃありませんかー」 
「そうとも限りません。やはり熱いとアクティブになるものですよ」 
「例えば?」 
「寒い冬には変質者はあまり出ませんが、暑い夏には多発します」 
「…あんまりよろしくない表現ですね」 
「おや、解りやすくありませんでしたか」 
「ううん、すっごく解った。昨今の日本ですし」 
「さて、では別の視点からも見てみましょう。…高屋敷君、エネルギーとはなんでしょう」 
「僕が物理を出来ないのを知ってて馬鹿にするんですねー!?」 
「ああはいはい…本当にもう君はよく泣くから困りものですよ…ほら、百円あげますから泣き止みなさいな」 
「わーい!」 
「えー…っと?なんでしたか……そうそう、エネルギーとは熱量の事です」 
「わあ、理科教師っぽいですねー!」 
「理科教師ですからねえ。そして、まあ簡単に言うと熱くなるとエネルギーが増えて、寒くなるとエネルギーが減るのです」 
「あ!僕解っちゃいましたよー。だから熱い地獄の方がエネルギーがあるんですね!!」 
「はい正解です」 
「わーい!!」 
「そして【熱≒怒り≒エネルギー】の式が成り立ちますね」 
「うわー!数学物理用語わかんない!!」 
「あ、そうでしたね。えー…【熱と怒りとエネルギーは大体似たようなもの】では?」 
「解った!!」 
「馬鹿で可愛いですねえ。まあ、【挑発→怒り(熱≒怒り≒エネルギー)=やる気】になります」 
「最初の方の話ですね」 
「はい。と言うわけで出来る限りにやる気。これも【やる気≒行動力≒生きる気力】…解りますか?」 
「うん、【やる気と行動力と生きる気力は大体似たようなもの】」 
「つまり【生きる気力を保ちたいなら灼熱の八熱地獄を選ぶべきである。】と成る訳ですよ」 
「へー!!でも安西先生」 
「ん?」 
「いいんですか?こんないい加減な知識でこんないい加減な仮説出したりして。調べ物とか一切しないで言ってるでしょ?只でさえどっかの偉い人が『何故君は他人の言う事ばかり信じて、自分の目で確かめる事はしなかったのか?』って言ってる位なのに」 
「それにはこう答えましょう。『貴方は私に悠久の時間を与えてくれるのですか?』私だって全ての実験・実証をやれるだけの寿命があったらやっていますよ」 
「開き直りましたね」 
「ま、こんなところですねえ…さて、高屋敷君に最善策を教えた事ですし」 
「え?」 
「もう死んで地獄に行っても大丈夫ですねえ〜」 
「え?え?」 
「実は、学校の地下にある原子力を使った人には言えない様な施設に問題が起きまして…」 
「え」 
「頑張って下さいね☆」 
「うわあああああああ!!!」 
 
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