晩御飯の材料を買いに

アパートのドアを開けると

近所に住んでいる

仲のよさそうな四人家族を

安西先生が虐殺していました

白いはずの雪が真っ赤です


「こんにちは高屋敷君、お買い物のようですねえ」
「…うん…」
「そんな高屋敷君に問題を出します。今私は少し太り気味の一家の大黒柱と料理上手の主婦と優しく厳しい祖母と四月に小学校へ入学する女の子を出刃包丁でずたずたに突き殺しているのですけれど」
「はあ」
「何の落ち度も無い善良な一家が残酷な殺人鬼に殺されているこの状況。さあ高屋敷君答えなさい、これを悲劇と思いますか?それとも喜劇と思いますか?」
「…それは一般論で答えればいいの?」
「何でも良いですよ、君の答えたいように答えなさい」
「ふーん…じゃあねえ」
「ええ」
「どうでもいい」
「…」
「…」
「…合格」
「ふうん」
「悪くありませんね、気に入る答えです。良いですよ、まだ君を手元に置いておく事にします…まだ生かしておく事にします」
「それはどうもですー」
「さて君の生死が決まったところで晩御飯の材料を買出しに行きましょうか」
「えー、安西先生も来るの?」
「お金出してあげますから」
「じゃあいいよ」
「では、行きましょうか」
「んぅー…そういえばさあ、安西先生はさっきの答えどう答えるの?」
「え、何ですって?」
「だから、何の落ち度も無い善良な一家が残酷な殺人鬼に殺されている状況は悲劇か喜劇かどっち?」
「あー…そうですねえ…」
「うん」
「全然面白くなかったとだけ言っておきます」
「へー…まあなんて言うかさ」
「ええ」
「ひどい話」

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