彼は夢を見る
彼女は夢を見ない










彼は毛布に包まって、すぐに寝息を立て始める
既に夢の中に降りた彼の寝顔は安らかで
母の胎内で眠る稚児の様に



彼女は毛布に包まって、いつまでも寝返りを打ち続ける
時計を見詰める彼女の顔は不安気で
母の腕を知らない子供の様に





ある夜、彼は夢を見る
そこは誰かの寝室で、毛布が誰かを包んでいる
傍に寄って誰かの顔を覗き込む
それは一人の女性で、目を堅く堅く瞑っていた
手は自身の耳をしっかりと塞ぎ
歯を食い縛り、呼吸は早く
表情には焦燥が浮かび
全身からは恐怖が滲んでくる様だった


彼は彼女の顔に手を伸ばす
こわばりが解れる様に穏やかに撫で
隣にそっと寄り添うと、彼女の汗で湿った背中に手を回し
彼女の頭を自身の胸に付け、彼女の手を優しく外した
髪を撫で、鼓動に合わせて背を叩き
大丈夫だと囁いた


彼女は少しずつ、真綿の様な柔らかさを取り戻し
穏やかな表情を浮かべる
彼女が寝息を立て始めたころ
彼は嬉しそうに微笑んだ












彼と彼女は夢を見る















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大変です、自分で書いたのに口から反吐と砂と砂糖が出てきました。
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