十字に組まれた板
磔られているのは安西聡美
手首に打たれた釘は軋み
広がる傷で呻きが漏れる
茨の冠が白い顔を赤く染め
突かれた左脇腹からは命が流れる



私も復活出来ると良いのですがね



溜息混じりの最期の皮肉
霞む視界を諦め眼を閉じる



神よ、神よ、何故私を御見捨てになったのですか



口の中で呟いてから苦笑した
神を信じた事など無い
己にとって神に等しい存在を探す
それは直ぐに思い浮かび
一度は打ち消したが
結局はそれしかなかった


残りの力を振り絞り
天を仰いで
血を吐きながら叫んだ




「高屋敷君、高屋敷君、何故私を…捨てたのですか!!」




暗い部屋に座る一人
銀貨三十枚で安西を売った高屋敷智裕
口付けで誰が安西かを知らせて
朝が来るまでに
三度彼を知らないと言った
安西の処刑が決まった朝
声無く笑いながら銀貨を投げ捨て
外に走り出て首を吊った
縄は切れて真っ逆さまに落ち
身体は裂けはらわたがみな出て死んだ


無花果の木に縄を掛け
椅子を蹴る間際に
泣き喚きながら叫んだ




「一人で死なせてなんかやるもんか!!」




――――――――――――
…依頼された訳じゃないんですけど
安西が綺麗な死に方をして高屋敷はグロい死に方をするのが良い。と仰る方がいたので
折角なので書いてみました

(正式に依頼された
【安西先生が妙に優しい話】
【江戸時代の大量殺人鬼の話】
 はまだ終わってません。もう忘れられてるんじゃないかと思うのですが、ねえ)

ホモ臭いと思った方ー?
私もそう思いました。まあどうでも良いや
でもこれ、新約聖書を元ネタにしてるのですよ
聖書を持っていない方は、駅前に行って外人に貰って下さい
イラン人からいけない薬を貰わないよう気を付けて下さいね

安西が言ってるのは、キリストが死の間際に言った言葉
の、一説です
同じ聖書ですが、書き手によって違うのですよね


マタイ・マルコ伝
「神よ、神よ、何故私をお見捨てになったのですか」
(イレ、イレ、レマ、サバクタニ)

ルカ伝
「父よ、私の霊を貴方の御手に委ねます」


…うーん、真逆のこと言ってますね!
所詮は人が書いたものです
矛盾が無い訳はないのに、辻褄合わせに信者は必死で
見てるこっちは面白いですよ。

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