御主人様、もうお目覚めになられる時間ですよ。お起きになって下さいな」

柔らかな声が鼓膜を揺すぶる

〔ああ…おはよう、安西さん〕
「お早ようございます、御主人様」

身を起こした貴方を優しく見つめるのは安西聡美、一週間前から貴方に仕える有能なメイドだ
パフスリーブ・ロングフレアスカート型をした紺のワンピース、純白のエプロンドレス、白いソックスに黒の革靴。と 、女性的ながら飾り気の無い仕事着を隙無く身に付けている
唯一飾る物といえば幾重のレースで作られたカチューシャだけだが、それもまた機能美が優先されていた
けれどももしこの人が艶麗に飾ったりなどしたならば、あまりの色香で眼が眩むだろう
それ程に美しく、また妖しい人物である

男性だという事は、付け加えなければならないだろうけども

「ふふ、まだ寝ぼけてらっしゃいますねえ…さあ、お顔を洗って下さいませ」

台車に乗せられた白いホーロー製の洗面器には、僅かにミントが香るぬるま湯が満たされている
貴方は顔を洗い、安西が差し出した柔らかなタオルでさっぱりとする

「マスター、食事の準備が出来ています。お召し代えがお済みになったら食堂にいらして下さいね」

そう告げると一礼して安西は去った
今日は外出する予定もない。貴方はクローゼットから普段着を出してさっと着替えを済ませる
酷く空腹の貴方は着替えながら、早く行って安西の作った食事が食べたいな。と考える


―――――――――――――――


食堂のドアを押し開けるとそこにはもう一人のメイド、高屋敷が居た

「…あ!御主人様、おはようございますー」
〔おはよう高屋敷君〕

にこにこと挨拶をしてくる高屋敷は、安西に比べて少しうっかりが多いメイドである
が、可愛らしいのでクビにはしていない
その屈託無い愛らしさを彩るのは鮮やかなピンク色をしたミニスカートのメイド服
奥床しく質素な安西のメイド仕事着に比べ高屋敷のそれは華々しく若さにしか似合わない華美さで、ひらひらと踊るレ ースはデコレーションケーキを思わせ。メイドというよりもウエイトレスに似ている
少し無遠慮に過ぎた貴方の視線を受けた高屋敷は、丈の短さが気になるのか恥ずかしげにスカートの裾を引っ張り、露 出している足を隠そうとする
因みにスカート丈は実に膝上25cmという短さであり、しゃがめば下着は自然見えてしまうのだが
貴方は老婆心から下にブルマを履かせているので、掃除の際にも安心である

御主人様。あのね、僕はね…あんまりこのカッコ…好きじゃないなあって……思うんですよ?だってさ…これ 、女の子のカッコだから…」
〔う、うん…そうは言っても、安西さんがどうしてもって…〕
御主人様は安西先生より偉いのに、なんで言うこと聞くんですか?」
〔…威圧感が…〕

そういえば高屋敷はどうして安西のことを『先生』と呼ぶのだろうか。と貴方は考える
しかしその思考は声をかけられて中断する

御主人様、お席にお付きになって下さいな。料理を運んで参りました。…高屋敷君、役立たずは役立たずなり に食卓を整えてくれたのですね、偉いですよ…はい、良い子良い子」
「え?役立たずって…あ、う……えへへ♪」

相変わらず可愛がっているのか可愛がっていないのか、よく解らない関係だなあ。と貴方は考える
ぼんやりしている貴方を安西が椅子を引いて促した
貴方は云われるがままに身を沈め、並べられた料理に手を伸ばす

「ああ、聞いて下さいな御主人様。今日の朝食は高屋敷君もお手伝いしたのですよ」
〔へえー…〕
「ね、ね、どれが僕お手伝いしたお料理だと思いますかー?当てて当てて!」

貴方の座る椅子の背に手を掛け、背後から貴方に頬を寄せて高屋敷がねだる
そして貴方は瞬時に答えた

〔これ〕
「え?!なんでそんなすぐわかったんですか!?」
〔だって黒コゲだから…〕
「が、がんばったんですよこれでもー!」
「その結果がこれですか…はっ」
「あーん鼻で笑われたよー!」
「ですが御主人様、折角高屋敷君が作ってくれたのですから残さず全部食べて下さいね」
〔え…でも焦げはガンに…〕
「口を開けて下さいなマスター」
〔いや、ま、待って…あがががが!?!〕
「高屋敷君、水をバケツに一杯持ってきなさい!流し込まなければ入りません」
〔んぐぐあべべべぬがうぐげげげしぬむぐががが!!?〕
「先生棒持ってきたからコレで押し込んで!!」
〔飲んだ!全部飲んだからもう押し込まなくてそっちは肺だからあげええええぇぇーーーーー!!!!〕





―――――――――――――――





意識が途切れてからどれ程経ったのか
血を吐き散らかしながら貴方は立ち上がり、椅子に縋って周りを見渡す
料理は既に片付けられており、貴方は胃に圧迫感を感じることから、無理矢理押し込まれたんだな。と察する

御主人様」
御主人様ぁー」

背後から掛かった声に振り向くと、安西と高屋敷が優しく微笑みながらこちらを見ている

〔うぉぐへっっ……なに、かな…?…おぶぇっ!〕
御主人様、差し出がましいとは思いますが…先日から仕事が滞っていらっしゃいます。今日こそは仕上げて下 さいませね?」
〔え、でも今日は天気もいいから、庭に出て三人でお茶でも…〕
「いけません、マスター」

安西の語気が強まり、貴方は少し目を見開く
自分でも驚いたのか、安西は困ったようにやや目蓋を伏せ気味にし、その為長い逆睫毛が強調される
そして気遣わし気に呟いた

「私は決してマスターに意地悪で言っている訳ではないのです。……ただ御主人様に勤めを果たして頂きたいだけなんです…解って下さいますでしょう?」
〔や、その、ええと…〕

安西は貴方の手を取り、そっと両手で包んで自分の胸に押し当てた
シリコンパットだと分かっていても、その仕草と感触に貴方はドギマギしてしまう
更に顔を上げ、深い瞳でじっと見詰められては抗う術など無く

「マスター…お願いですから、どうか…」
〔わかりましたやります!今日中に仕事を片付けます!!〕
「ああ、本当ですか?良かった…私も嬉しいですよ、御主人様」
御主人様えらーい!頭ナデナデしたげますよう♪」
「さあ高屋敷君、私達は私たちの仕事にかかりましょうね」
「はーい。御主人様、失礼します!」
「失礼致します、御主人様」

一礼し、一人は音も立てず一人はぱたぱたと部屋を出た
部屋に残った貴方は、彼らに給料を払う為になら幾らでも働こう。と考える
足取りは軽く、鼻歌交じりに書斎へ向かう

扉を開けた貴方は、メイド達と遊び呆けた分山積みになった書類の山を見て、がくりと膝を付く事になるのだが







―――――――――――――――







一時間ほど仕事をしただろうか
日は既に真上に昇り、洗濯日和を演出している
貴方は風で書類が飛ばぬようガラスの文鎮を乗せてから、新鮮な空気を入れようと窓を開ける
見下ろせばそこは青い芝生、山盛りの洗濯籠を抱えた安西と洗濯紐を張る高屋敷
洗剤の匂いと安西の穏かな歌声が風に乗って響いてきた




Your Mammy is a pig

So great pig

But she said everyday

Don't eat me

Oh-oh please please

Don't eat me

BOO she is no more

My Dear Pig is you




歌い終えたその時、一陣の風が強く吹いた
安西は気にも掛けずスカートを翻させるが、高屋敷は小さく悲鳴を上げてスカートを押さえる
押さえた時に手から離れた貴方のシャツが舞い上がって飛んでしまった
慌てて高屋敷は小さく跳ね――実際は跳ばなくても掴めたのだが――手を伸ばして宙に舞うシャツを掴み取った
洗い立てのシャツを洗濯機に逆戻りさせずに済んだことがよほど嬉しかったのか、シャツに顔を埋めてにこにこしなが ら歌いだした




おっ日様とダンスだらったったぁー!

一羽二羽三羽四羽カモのヒナー

五羽六羽七羽八羽ーふわふわねー

ここはネコもカラスも来ーなーいー

お散歩ーすんだーらっお歌のっおけいーこ

スーテキなカノンだグワッグワッグワー!!

一羽二羽三羽四羽カモのヒナー

五羽六羽七羽八羽十羽十一羽十二羽十ー三羽ぁー!

かーわいっいねー

元気ーだねっ!!





日差しを浴び大きな声で歌いながら眩しい笑顔を見せている
そんな高屋敷を目を眇めて見ていた安西が少しばかり手を休め、二言三言囁くと
それを受けた高屋敷は一層破顔してけらけらと笑い転げた
美しく、愛らしいメイド達を見た貴方は踵を反し、休憩にしてお茶にしよう。そう考えた貴方はドアに向かう
瞬間、背後から風が一陣




「何処へ、お行きになられるのですか?」




背骨を引き抜かれたような寒気を感じて振り向くと、そこには安西が立っていた
窓を背にした安西は窓から吸い込まれる風で長い黒髪を乱し、窓から取り込まれる光で逆光になり顔が見えない
それは当然の現象である筈なのに、貴方の恐怖は消えない
当たり前だ、庭から三階にある貴方の書斎まで一秒足らずで来れる訳が無いのだから
人間じゃない。貴方はそう考えた

「…御主人様…何処へ、お行きになられるのですか?」
〔いやっ…ほら、二人が忙しそうだったから、手伝おうかと…〕
「それはそれは、ありがとう御座います。ですが洗濯は私達メイドの仕事ですよ。御主人様お仕事は…ねえ、なんでしたっけ?」
〔書類です!書類をさっさと片付けることです!!〕
「解っておられるではありませんか…では、失礼致します」

窓から一歩二歩と歩み遠ざかり、表情が伺えるようになった安西は意外にも微笑んでいた
今のは怒っていただけだ、一瞬でここまで来たのは…多分、自分の記憶障害だろう。そう貴方は考える
だってほら、今の安西は笑っている。怠けていた自分を諌めに来ただけだ。そう貴方は考える

〔ごめん、ちゃんとやるから〕
「いやですねぇ、私は御主人様に謝られる身分にはいませんよ?」

微笑を苦笑に変え、一礼して安西が去る
重厚なドアが重い音を立てて閉じた
貴方が机に向かおうとした瞬間
細くドアが開いた

「…御主人様?」

細い細い隙間から、安西の眼が覗く
常に礼儀に適った態度をとる安西にしては、随分不躾な態度だ
少し奇妙に思いながら、貴方は笑って聞いてみた

〔なにかな?〕

すると覗いた眼が、ニヤリと笑い――









「次は、ありませんよ」








ドアが閉まった時、貴方は床に嘔吐していた



―――――――――――――――



そして馬車馬の如く働き詰め、日は少し傾いた頃。貴方は手洗いに立とうとする
その瞬間首に絡みついた、細く冷たい何かの感触

「一歩でも動いて御覧なさい…季節外れのスイカが一つ、転がることになりますよマスター」
〔ヒッ!?ヒイイイィィィ!!!〕
「今まで何度も申し上げましたのに…何処に行かれるのです御主人様?次は無いと言った筈ですが?」

キリリと食い込む感触は若しかしなくとも安西が絡めたワイヤーだろう
答えぬ貴方に焦れたのか、その食い込みは刻一刻とより深くなり貴方の血流を食い止める
気を失う前に、切断される前に、答えなくては。と貴方は考える

〔トイレに!トイレに行きたかったんです!!〕
「トイレに…?」
〔はいそうです!だから首を絞めないでくれませんかあげべべべ!〕

安西は名残惜しむように一度強くワイヤーを引いた後、するりと解いた
自身もひらりと貴方の前に立ち、照れた様に少し笑う

「ふふ、それならそうと早く言って下さらなければ…危うくマスターの血糊で大切な書類を汚してしまうところでした 」
〔う、うん…ごめん〕
「ですが、御主人様、今後は誤解を招く行動は慎んで下さいね?ドアノブに手を掛ける等、外に出る意思表示かと思って しまいます」
〔え?…いや、だって、トイレはこの部屋に無いし…〕
「何を仰っているのです?」

美しい安西の笑顔が、悪魔のそれに見えたのは

「いやですねえ御主人様。部屋の隅にバケツを用意したではありませんか」

調教師のような台詞の為なんだろうな。と貴方は考えた

〔ま…待って安西さ…〕
「では存分に排尿行為を楽しんで下さいな、御主人様☆」

芝居がかった一礼をし、貴方に口を挟む隙を与えず安西は去った
呆然と立ち尽くした貴方は、現状の展開に思考が着いて行かず阿呆の様に宙を見詰める





(…コン、コン)





小さなノックの音が響いた
ドアノブに手を掛けられない貴方はどうにも出来なかったが、そんな心配もなく小さな影が滑り込んできた

〔高屋敷君〕
「しーですよ御主人様…トイレ行きたいの?」

貴方の口に人差し指を当てて黙らせ、高屋敷は小さな声で尋ねる

〔うん…でもバケツはちょっと…〕
「安西センセなら、今宅配便受け取ってるから大丈夫ですよ。ホントは見張ってろって言われたんですけど御主人様、虐待されてて可哀想ですから出したげますよぅ」
〔あ、ありがとう高屋敷君…!〕

ああ、辛い境遇だと小さな優しさが心に滲みる。そう貴方は泣きながら考える
そしてこっそり抜け出した貴方は高屋敷に見張って貰いながら用を足し、極力音を立てないよう部屋に戻った
恐る恐る部屋に戻っても安西の姿は何処にも見えず、貴方はほうっと息を吐いて革張り椅子に身体を埋め込んだ

戻って暫く経った頃、ノックのが書斎の扉を打つ。貴方はそれにどうぞと答えた
すると安西が高屋敷を連れて書斎に入る
高屋敷の顔色が悪いのは、多分そういうことなんだろうな。と貴方は覚悟を決めた
安西は立ち止まってドアの横に宅配便らしき箱を置き、柔らかく笑って貴方に問い掛ける

「何が言いたいか、お分かりですね御主人様?」
〔分かる。…けど濡れ衣だよ、外になんて出た覚えはない〕
「へえ…随分強気じゃあありませんか。ですが、残念ですねマスター?高屋敷君を問い詰めたら、白状してしまいまし たよ?」

安西の言葉に、高屋敷が耳を覆ってしゃがみ込む
ごめんなさい、ごめんなさい。と幾度も呟きふるふると首を振り続けるその姿に、貴方は責める気を失くす
許してあげよう、でもその代わりにこれくらいは言ってもいいだろう。貴方はそう考え口を開いた

〔高屋敷君が嘘を吐いたかもしれないよ〕

虚勢を張って、必死に微笑んで見せながら貴方は言い放つ
貴方はとても必死に演技をする。そうしなければ、負けを認めれば、貴方の命は無いのだから
貴方の態度に鼻白み、安西がほんの少しだけ口篭った
その隙を逃すまいと貴方はもう一つ畳み掛ける

〔それにもし、安西さんが高屋敷君を殴って聞き出したんだったら証拠にならない。憲法でも決まってる。…高屋敷君 は悪くない〕

そう言った後貴方は高屋敷の方を見る。高屋敷は涙に濡れた顔を上げ、与えられた許しに戸惑った表情を浮かべた
貴方はそれに笑顔で答え、高屋敷もそれに笑顔で感謝を述べた
その笑顔は安西の暴力を肯定するものである。だから、貴方は笑った
安西に勝った。貴方はそう思った

しかし貴方の笑顔が作られて五秒と立たないうちに、安西はくすくすと愉快そうに笑い出した
それは勝利を確信した者の笑い。相手を服従させる者の笑い。絶対的な強者の笑い
笑顔が引き攣る。後退ろうとして、身体が動かないことに貴方は気付く

「嫌ですねえ御主人様、憲法だなんて…ふふ…憲法、ねえ?はは、そんなものに頼ってらっしゃったのですか……御主人様…拷問で聞き出したことが無価値だなんて、そんな事は全然ないのですよ?」

ぞっとするような声色で、安西が貴方に近付いた

「嘘でも何でも、私に有利なことであればそれは真実です」

そうだった、ここでは安西が法律なのだ
もちろん立場上は貴方が主君であり、安西は従者に過ぎない。しかし屋敷全体の管理、仕事上の手続き、貴方の健康管 理にまで、その他諸々微に入り細にわたった安西の完璧な仕事ぶりは実質的に、貴方を含めたこの屋敷全ての支配者へ と安西の地位を押し上げたのだ
そうして住み心地の良い屋敷が、今では監獄へと意味を変えている
その監獄を貴方は甘んじて受け入れていた。あまりの住み心地の良さ故に、看守の美しさ故に
不満など何も無い、貴方は贅沢過ぎた囚人だった

だが今は…死刑執行人を目前にしている

「と言うか、バケツを使ってない時点でバレバレですよマスター」
〔い、いやまだ我慢出来ているだけで…!〕
「へえ成程?では少し失礼しますよ御主人様!」
〔!?〕

初めに気づいたのは衝撃。次はその衝撃を腹に受けたこと。そのまた次は衝撃が安西の足で生み出されたこと。その次 は自分が膝を付いたこと
一番最後に気付いたのは、絶望的な痛み

〔あ、あ、あ、…アグっ!おう、オげべエエエェェェッッ!!〕
「おやおや?腹を蹴り飛ばしても漏らして下さいませんねぇ〜…やっぱり空っぽなんじゃありませんか?マスターの膀 胱は…」

絨毯が吐瀉物で汚れていく。昼食は摂っていなかったが、詰め込まれ過ぎた朝食が残っていたらしい
激しい鈍痛に正気を取り戻せないまま嘔吐感の二迅目がやってきた。貴方は破裂音を立てて固形交じりの胃液を吐き、 また胃の痙攣に悶え、自分の吐き散らかした反吐の中へ顔を埋める様に倒れこんだ

しゃがみ込み貴方と安西を見守っていた高屋敷は、何が起こったのか解らない表情を浮かべていたが、貴方が二度目に 床を汚した時に悲鳴を上げて駆け寄って来た
自分の吐瀉の海で窒息しかけていた貴方を汚れに構わず抱き起こし、安西から庇う様に胸に抱える
それを見た安西は上機嫌に呟いた

「偉いですねぇ高屋敷君、主人の危機には何があろうとも駆け付ける。メイドの鏡ですよ」
「やめてあげて安西先生!」
「やめる?それは出来ません」

安西の返答を聞き、半泣きになった高屋敷は一層強く貴方を抱き締める
そして、安西は貴方に向かって語りかける

御主人様、貴方は4代目としてこの家を5代目の為にまたその先の為により栄えさせなくてはいけないのです 。これは権利ではありません、義務なのですよ?それを貴方は…私達メイドにかまけて遊び呆けるばかりではありませ んか!ああ、何て罪を犯しになったのですか御主人様。ですがご安心下さいなマスター、この私がマスターを裁いて罪を償わせて差し上げますとも、ああ 、貴方の罪を清算する為に!」
「してたじゃない!御主人様は今日お仕事頑張ってたよ!?」

胃と横隔膜が未だひくついて返答出来ない貴方の代わりに、高屋敷がぽろぽろ泣きながら答えた
困ったような表情を浮かべ安西は高屋敷の傍に寄りハンカチを差し出すが、高屋敷は首を振って睨み付けるだけ

「高屋敷君、君はもう少し色々な事を知る必要がありますよ。…良いですか、御主人様は仕事をしていた。それは私も知っています、ですが、外に出ることを仕事の放棄と見なすと伝えて いたにも拘らず御主人様は外に出た。つまり御主人様は仕事を放棄したのです」
「それは…だって、トイレくらい」
「私は用足し用にバケツを置きました。部屋を出る必要は無い。御主人様は義務である仕事を放棄したのです、それを罪と言わずして何と言いましょうか?」
「…」
「高屋敷君…良いですか?もしここで御主人様を許してしまえば、御主人様はこの先永遠に罪に囚われる事になります。そうなる前に、お仕置きをして罪を清算して差し上げる のは、御主人様の為になるとは、思いませんか?」

安西の一見理論的に見えて実の所道徳というものを吹っ飛ばした言葉に、素直な高屋敷は説得されかけている
貴方はそれに気付き何とかしようと高屋敷の腕の中でもがくと、その動きで我に返ったのか、緩んでいた高屋敷の腕に 力が戻った

「でも、でも…ダメ…やっぱり、御主人様が……可哀想」
「……そうですか。では、仕方がありませんね」

溜息をついた安西が貴方と貴方を抱く高屋敷に背を向けて、ドア横の箱に向かって歩いた
箱を取り上げ、ガムテープを引き剥がし、細く裁断された紙を掻き分け
取り出されたのは、九尾の猫鞭

「通販で頼んでおいたのです。御主人様はまだ調教が御済になってはいませんから、まあ初心者向けのこれで…ね?」

どこか残念そうにいい加減に笑い、安西は躙る様に貴方へ近付く
手からぶらり垂れ下がる黒革が鈍い光で貴方を威嚇する。九本の瘤がついた革紐は、どれ程の苦痛を貴方にもたらすだ ろうか

「さあ、高屋敷君お退きなさい?君まで鞭打たれることになりますよ」

射程距離の半歩手前で立ち止まり、高屋敷に立ち去ることを促す安西
貴方は僅かに高屋敷の加護を期待したが、鞭に怯えたのか高屋敷はあっさりと貴方を離し立ち上がった
逃げるように貴方から離れ、安西の後ろに回りこんで此方を見ずにじっと俯く
責めるつもりは無い、予想していたものな。と貴方は考える

「50回です、御主人様。良い子にしていて下されば、50回でお終いです」

安西のほっそりとした腕が高く高く掲げられ、黒光りした凶悪な責め具が振り被られる。痙攣が治まり、耐えられるほ どに痛みの引いた貴方は、逃げようと隙を探った
けれども当然のように隙は無く
一度は灯った抵抗の意志も、笑った膝では直ぐに掻き消えた
貴方の諦観的な無抵抗を見て取ったのか安西は短く笑い、貴方の肉で音を立てる事無く鞭を下げた
そうして先端部分で貴方の頬をなぞり上げ。首筋を掠める様に触れた瘤付きの革紐がぞくりとさせ、貴方は鳥肌を立て る。その反応に安西は狂的な笑みを更にと深めて木製の柄を貴方の口に螺旋入れる

「良い子ですねぇマスター?素直な子は大好きです…大丈夫、痕が残らないようにしてあげますよ」

後頭部を優しく鷲掴み鞭の柄で貴方の口腔内を嬲り回す。何処と無く性的な、愛撫じみたその行為は貴方に倒錯的な感 情を生み出させる
安西がそれを見過ごす筈も無く、ちろりと舌なめずりをした後立ち上がりざま鞭を引き抜いて
貴方の唾液に濡れた柄を余裕綽々とハンカチで拭き取り。そして、宣言

御主人様、服を脱いで背中をこちらに出しなさい」
〔…はい〕

最早抵抗など思考の片隅にも無い貴方は、大人しくボタンに指を掛ける
どころか、期待すらしているのは一体どうしてなんだろう?貴方はそう考える

考えて、目を上げた瞬間

膜がかかったような貴方の瞳に映ったのは、安西に飛び付いた高屋敷
床に安西を押し倒し、貴方が逃げる隙を作ったのだった

「っ!!に、逃げて下さい御主人様ぁー!!」
「なっ…!」
〔高屋敷く…〕

我に帰った貴方は高屋敷が作ってくれた隙を逃さず廊下に逃げ延びる

「ちっ…この、離れなさい高屋敷君!」

背後からは苛立った安西の怒声が聞こえ、ややあってから頬を張る音と高屋敷の悲鳴が聞こえた
貴方が階段へと辿り着いた頃、廊下の端から声が被さってくる





「逃げましたねマスター?逃げたのですね御主人様!?受けて当然の罰から逃れようとしたのですね!!ああ、いけない方ですねぇお仕置きはもっと重 くなってしまいましたよマスター可哀想にあっははは!!」





吐き気を堪え、高屋敷に詫びながら、貴方はかくれんぼを開始した








―――――――――――――――







「マスター…?マスター?御主人様?何処にお隠れになったのですか?」

猫撫で声が流れてくる

「マースーターーー…出てきて下さいな?素直に出てきて下さったら、許して差し上げますよ?」

安西のそれは人魚の歌声のように貴方を惑わす
貴方は隠れているクローゼットで耳を塞ぎ歯を食い縛り目を見開き、安西を求めてガタガタと震える身体を必死に抑え て身を潜める

御主人様?…ねえ、無駄だと言うことがお解かりにならないのですか?」

声につられない貴方に焦れたのか、安西の声に棘が生えた
そしてその棘の量は増し、毒を持った花が咲く

「マスターマスターマスター!聞こえますよ聞こえますよ御主人様。貴方の愛しい心臓の音、あと肺を空気が出入りする音、唾液を嚥下する音、血管を血が巡る音、胃 が蠕動する音、横隔膜の痙攣する音、腎臓が不純物を取り除く音、小腸の柔毛がなびく音、まだまだ沢山。ああ、ああ 、聞こえ過ぎて煩いですねぇ御主人様。貴方が何処に居るのか混乱して判らなくなる程騒がしい!!」





(ガシャン!!)





ヒステリーじみた叫びと共に、隠れていた扉が開かれた
貴方は怯えて動けないまま、逃げ場を塞ぐ悪魔を見上げる


「………ほら、見つけましたよ」


暮れ行く太陽が、安西の姿を赤く染めている
太陽が沈んだ頃に、安西さん赤く染めるのは一体何になるんだろうか。貴方は狂った脳の一部でそう考える
突き飛ばして逃亡の道を開こうとするがどうしても動けない。耳を塞いだ腕が離れない
命乞いをしようと口を開けかけるがどうしても開かない。食い縛った歯が動かない
美しい悪魔の姿を見まいと目を閉じようとするがどうしても閉じない。魅入った目が離れない
暗い箱の中で固まったままの貴方に安西は微笑みかけ、フレアスカートの裾を摘む。貴族の挨拶のように上に引き上げ 、足が覗き、タブーとされる場所が晒されても止まらない
露になる白いふくらはぎ。次いでゆっくりと膝が現れ、むっちりとした太股が見え…

同時に見えたのはホルスターに吊られたリボルバー

貴方は引き攣るように笑う
安西は銃を抜く
銃は眉間に押し当てられる







引き金が、引かれる








―――――――――――――――









貴方は冷たい台の上で目を覚ます
どうやら気を失っていたらしい。殺されていないのは不思議と言えば不思議だが、あの安西が苦しませずに銃弾一発で 殺すとも考えにくいな。と貴方は考える
台に固定されて殆ど動かない首を無理に動かし、自分がどうなっているのかを見てみる
服は下着を残して剥ぎ取られ、固定の為にギッチリと巻かれた赤いベルトで、血が通わない四肢は青紫色になっている
気付いてみるとぴりぴりとした痺れが手足に纏わり付き、居ても立っても居られぬ掻痒
動かぬながらも身悶えていると、足元から光が差し込んできた

「おや…お目覚めになられたのですね、御主人様」

その光は地下へと階段を降りてきた安西が手にしていたランプだった
それにしても、この屋敷に地下室があったなんて知らなかったな、それも拷問用の台まで。そう貴方は妙に冷静な頭で 考える

「御気分は?」
〔最悪だよ〕
「そうですか」

いつもなら貴方の感情を読み取って宥めるなり元気付けるなりとする安西だったが、今回ばかりは貴方の訴えも聞き流 す
命乞いは無駄だろうな。そう貴方は考えた
現世に別れを告げている貴方を余所に、安西はしゃがんで拷問台の下に上体を折り込み何かを引きずり出そうとしてい る

「あれ?抜けませんね………っと!やれやれ、流石にちょっと狭すぎましたねぇ、擦り傷が付いてしまいました」
〔何入れてたの、安西さん〕
「え?ああ、そこからじゃ見えませんでしたね。これですよ」

安西が立ち上がりひょいと持ち上げられたのは、青褪め気絶した高屋敷
ぐったりと力なく安西の腕の中に納まり、口の端からは頬を張られた時のものだろう血がこびり付いていた

〔…!?〕
「いやあ、ちょっと邪魔だったのでここに仕舞って置いたのですよ。…ん?……おかしいですね、脈が…」
〔医者を呼んであげて!!お願いだから!!〕

冷たい地下の床に体温を奪われたのか、閉じ込められて酸素不足だったのか。兎も角高屋敷は瀕死だった
貴方は慌てて安西医者を呼ぶよう訴えるのだが。安西は不思議そうに笑ってこう答える

「…?何を仰っているのか解りませんよマスター?高屋敷君が死んだら代わりを雇えば良いでしょう」

本心から言っていると見て取れる態度に貴方は絶句し、そして問い掛ける

〔高屋敷君のこと、安西さん嫌いなの?〕
「好きですよ。可愛いですし、何より良い子ですものね」
〔じゃあどうして…〕
「死んだからといって可愛くならない訳じゃありませんよ。剥製にして客間に飾れば、きっとぴったりです」

貴方はもう一度絶句する
そして気を取り直してまた問い掛ける

〔高屋敷君は、まだ助かる?〕
「んー…そうですねぇ、今ならまだ。…と言っても、医者じゃ無理でしょうね。私が適当に黒魔jy…ゴホン、医学の 力で」
〔なんでもいい!なんでもいいから助けてあげてくださいお願いします!!〕

値踏みするように高屋敷を裏に返し表に返しひっくり返し逆さ吊り。ためつすがめつしていた安西だったが、切実な叫 びを聞いて貴方に視線を向け、細く細く目を細め

「…では、お仕置きを受けて下さいますね?」

受けるも何も、こう固定されていては強制的にお仕置きはされるだろうになあ。そう貴方は思う
思いつつもそんな事はどうでもよく、勢い込んで了承の返事をした

〔わ、わかったよ!罰は受けるから高屋敷君を…〕
「ああ…お優しい御主人様。仕置きは軽くして差し上げます」

そう言って笑った後安西は貴方の額にキスをし、床に放って置いた高屋敷を拾い上げて地下室の隅にあった青いポリバ ケツの中に叩き込み。鉄の棚から取り出した12ガロンポリタンクから、腐った魚の目玉を磨り潰したような異臭のす るとろみのついた液体を注ぎイワシの骨を放り込み、蓋をして火を放った
出来の悪いシュールレアリズム映画を見せられた気分になった貴方は、気を落ち着けようと瞼を閉じ

開いた途端眼球に注射針を刺された

〔………あ?〕
「大人しくなさって下さいね、動いては失明してしまいますよ」

何をされたのか分かりつつも、理解を拒む貴方の脳
貴方はただぼんやりとガラス注射器のシリンジが押し込まれる様を見ていたが、始めの一滴が右眼球内に入り込んだ瞬 間、気が狂いそうな熱さが目の中で爆発した

〔あっがああああ!?!あぎヒィ!イギギギギギギギイイィーー!!!〕

眼球を満たす水が溶岩に変わったのかと錯覚する程の熱が冷め遣らぬうちに、液を注がれたことで高まった眼圧が破裂 しそうな感覚を目玉に与える。実際に幾分か肥大したのか、貴方の右眼球はもう片方に比べ眼窩から飛び出ている

「さあさあ御主人様!贖罪の時間で御座います。優しい優しいマスターの為に特別なお注射をして差し上げましたのです よ、御主人様の気がお違いにないように、気絶なさらないように。…ただ、痛みは倍以上になってしまいますけれ ども…医学にも限界と言う物がありますからね、黒魔術とは違って。ですがこれで大丈夫、薬液は眼球の血管からそろ そろ脳に回った頃です…そうではありませんか、御主人様?」

安西の言った通り、眼球の熱は引き始め肥大も収まってきたようだ
針で刺された穴からは薬液混じりで緑色をした房水が垂れ落ち、貴方の涙とも混ざり合って目尻を伝い、鉄の拷問台に 淡いエメラルドの珠玉を散らす

「チェーンソー…斧…日本刀…電熱線…包丁…ピアノ線…果物ナイフ…紙やすり…レーザーメス……いや、ここは古風 にこれでいきましょうか」

その姿は左眼でしか見えないのだが、安西がなにやら不吉なことを一人ごちつつ大振りの鉈を壁から取った
エプロンドレスのポケットから【メガネスーパー】と銘打たれた眼鏡拭きを取り出し、錆止めの油を拭い取る。持ち手 から始まり、上部へと
ゆったりとした仕草で大鉈を拭き終え、透かして見るかのようにランプに翳して満足気に微笑み
振り被り、近付き、

〔は…はひ……止め…やめて安西さ…!〕





(ドグチッッ!!)





振り下ろした

〔ギいっ!!アギャギャギャアアアアアーーーー!?!!〕
「まずはここから…っと」

貴方が叩き切られたのは片腕、肩の付け根からすっぱりと
骨の断面から髄がどろりと流れ出た。血は大分前から塞き止められていて殆ど流れない

〔あひぃ!おごぉぉお!!お、う、…オグブェエエェェ!!〕
「ん?…おやおや…御主人様、吐くほど痛かったのですか?」

既に空となった胃からは黄色く濁った胃液しか溢れなかった
それでも貴方は何かを吐き出さずにはいられなかったのだ。それがこの身を襲う地獄の痛みを少しでも軽減させる筈だ ったから
でもそれはまさに焼け石に水
吐くことで紛らわされた痛みはほんの僅か。圧倒的な容量と質量の痛みの前には何の意味も持たない

そして続けざまにやってくる痛み。添える様に鉈を左足の付け根に触れさせ、大根を切るが如く押し切る。貴方は身も 世も無いと痛みにのたうつ
安西の表情は旦那の為に手料理を作る新妻のそれに似ていた
切り落とした足を掴み検分しながら傷口に舌を一這わし。不味そうに顔を歪め小さな声で、香草と一緒に煮込まなけれ ばと安西は呟いた

轟々と音がする。高屋敷が燃える音
轟々と音がする。貴方の耳鳴りの音

安西がスカートを捲り上げ拳銃を取り出す

「少し趣向を変えましょうね」

一遍通りな仕事の中にも楽しみを。そう高屋敷に諭していた在りし日の安西を貴方は思い出す
銃口が垂直に右脚付け根に押し当てられる。発射。目の前が赤く染まる。脚にぼつりと穴が開いた
安西は銃を滑らせて、第一銃創の隣にまた銃口を押し当てる発射。目の前が白く染まる。脚にぼつりと二つ目の穴が開 いた
銃弾を一発、また一発とセンチ刻みに打ち込み、じわりじわりと穴を開ける。合計十八の穴を開け、ぐずぐずになった 脚それはさながら切手の切り取り線で
安西が貴方の足首を持って容易く引き千切った時



薬の効果が切れたのか、貴方はやっと気絶できた










―――――――――――――――









書斎にペンの走る音が響く
貴方は仕事をしている。とてもとても熱心に机に向かっている
そんな貴方の仕事ぶりを褒めるように労わるように、安西が優しくからかった

「すっかり小さく軽くなっておしまいになりましたねえ、御主人様?…ふふ、高屋敷君よりも、ね」

机には向かいつつも、貴方は椅子に腰掛けてはいない
革張りの椅子に座っているのは安西で、貴方が座っているのは安西の太股
両足を無くした貴方は、ずり落ちぬよう安西に背後から抱えられたまま仕事をこなす
猛烈な勢いでまた一枚書類を書き終える
片腕の貴方がペンを置かずに済むように、安西が手を伸ばして次の書類を引き寄せた
身体に生えている四つの棒のうち三本を無くした貴方
たった一本残された腕は、狂い果てた速さで文字を綴る
安西が貴方のこめかみに唇を押し当て、濡れた声で耳元に囁く

御主人様、もし今日中に仕事を片付けられたら、手足を付けて差し上げますよ」

文字を一つ書く度に、狂気が貴方に綴られる
頭が痛い、腕が止まらない、吐き気がする、死んでしまう。そう貴方は考えるのだが、貴方を抱く安西の腕は鉄の檻よ りも強固に貴方を囚う
酷い頭痛の波が来た。貴方は空の胃から血の混じった胃液を吐き垂れ流す

「でもマスターの片手はマリネに、左脚はシチューに、右脚はハンバーグにしてしまいましたので、高屋敷君のを付け て差し上げます」

安西の言葉が耳に入る度に貴方は白痴へ近付いて行く
眼は虚ろに彷徨いだし、閉じる事を忘れた口からは見っとも無く涎が滴り落ち。粘度と量を変えて間断を挟まず流れ落 ちる唾液を、安西は書類に付着しないよう手で受ける

「ああ御主人様、こんなに唾液を溢されては、喉が渇かれていらっしゃるでしょう?今食事と飲み物を持たせますか らねえ」

安西が机に乗っていた呼びベルをチリリと鳴らすと、扉を開けて無表情に高屋敷が料理を運んでくる
料理上手な安西の腕は本当に確かで、食欲をそそられる匂いが鼻腔に進入し脳へ直接震えをもたらす。その香りは飢餓 をもたらす悪夢の芳香。空腹中枢をメタメタに犯して欲望へと一直線に走る豚同然に貴方を変える
聖なる銀のフォークが呪われた同族の、それも己の肉に突き刺さったのを貴方は見た
その肉に貴方の血で作られたソースがたっぷりと絡めて持ち上げられた
貴方は餓えている、本当に本当に餓えている

貴方が口元に近付けられた禁忌の肉片に齧り付いても、それは不思議ではなかったのだ












斯くして、は地獄に落ちた。












――――――――――――――――――――――――――――――

はい、と言う訳でリクエスト
【「安西先生と僕」の読み手がグチャグチャのデロンデロンになる名前変換小説】
を消化致しました

ちょっと…長かったですね。状況描写をもっと減らしても良かったですかね
読み手が話す台詞を両性に適合するようにした筈が、男性寄りですし
それより何より、何でメイドなんだ

…まあ良いか

えーと、前回の名前変換小説とはちょっと毛色が違いますが
ご満足頂けたでしょうか、依頼者の方?
『腹の足しにもなりゃしねえ。もっとマシなもの書けなかったのかこの不燃ゴミ』
と仰るならば泣きながら自害を致します

これに懲りず、また依頼して下さると嬉しいです。
 BACK