「別に、人の意見なんて聞きたくないって程、僕は馬鹿じゃない
でも、やっぱりムカッとくるんです
説教…でいいのかな、押し付けがましい意見が嫌いなんです
例えば、〜しなさい。だとか、そんな感じの
親とか先生だとかの…相談したかっただけなのに、怒られたりする時とかも

僕は子供だよ?それくらい解ってる
ちゃんとした大人よりも人に頼らなくちゃいけないし、僕より立派な人の話を聞かなくちゃいけないのも知ってる
一人で最善の道を探せるほど僕は頭が良くないし、自分さえ良ければいいって程僕は強くない
それに、僕は人の話し聞くの凄く好き。色んな人の色んな思想が知れて凄く好き

僕は僕でその人じゃないし、当然僕の人生だからその人の人生じゃない
こんな事なら皆が言って、それに皆賛同してる
僕は僕なりのやり方があるし、それが一番巧くいく事も誰より知ってる
誰だって僕以上に僕の事を知ってる人なんていやしないんだもの

だからって、僕の事なんてなんにも知らないくせに。っていじけるつもりじゃないんです
解らないなら、なにもしなければいい
これって普通ですよね?核の発射装置を知らない人が押すべきじゃないのとおんなじです
これは自信持って言えます。解らないなら、なにもしなければいい

なのにどうしてか皆弄り回したがるんです
ああすればいい。こうすべきだ
べきだなんて、どの口が言ってるんだろう?それは僕にあったやり方じゃない
もいっかい言うけど、解らないならなにもしなきゃいいのに


ごめんなさい。なに言ってるか、解らないよね?
僕も良く解ってないんだ。でも、最後まで聞いてほしいの


僕だって最初ははいはいって聞いてたよ
でももう疲れた。何年そうやってたと思う?
それこそ赤ん坊の時からだ、僕は昔から変だったから
小さい頃から世の中が良く解らなかった。なんか皆が僕と違った
逆かな?僕が皆と違った
でも、大した違いじゃないんだ。ほんとにちょっとだけ
僕も皆も、才能の無い凡人だってのは一緒。ただ考え方とか環境とかが違ってただけ
だから合わせるのも簡単だった
別に皆を下に見てる訳じゃないよ、がっかりだけど凡人だから、そんなにイタい人じゃない
むしろ逆なんだ。合わせないとついていけないんだもの
ついていけない事だってあった。恥ずかしいから、言えないけど

根本的に自分を世の中に合わせるのは諦めちゃった。頑張ったけどダメだったから
それに、大した事じゃないし…今までだって何とかやっていけたからさ
あのね?僕ってすっごく普通なんだ。こんな事言ったら変かもしれないけど普通なの
でも普通なのにどこか変なんだ。どこが変なのか自分でもわからない
この変ってのが、個性の枠に収まってるのって奇跡だと思う
すっごく変なのは解ってるから、皆と同じ様に理性に閉じ込めてる
でも、僕は何がおかしいのか分からないから、いつか気付かないうちに出てきちゃうかもしれない
僕はそれが凄く怖い
だって、その時は世の中から外されちゃうって事だもの

皆…ううん、きっと僕の方がおかしいんだろうけど
少し、自分の意見を聞いてもらおうとしすぎるんじゃないかなあ?
聞く側には選択権が無いみたいに、自分の意見を押し付けるんだ

僕は、それが嫌だから、人に意見を押し付けないようにしてる
自分が嫌な事人にやらないって、普通ですよね?
でもそうすればするほど、周りから押し付けられるのが辛くなってく
僕はどうすればいいの?僕も押し付ければいいの?
だけど僕はそれをしたくないんです。よく判らないけれど、醜い事のように思えるから

ね、例えば、こう言ってくれればいいんです
『私が君の立場だったら、私はこうするだろう。』
そうすれば僕はそのやり方がいいと思えば実行するし、僕にあってないと思えば他を探す
合理的だよ。そう思わない?



でも、人に意見を押し付ける道理が無いって言ったとおり
僕にも人にこの意見を押し付ける道理が無いから
黙ってるしかないんです
だから、世の中が凄く息苦しい」









まだ言いたいことはたくさんあるけれど

のどが渇いて(という言い訳で)、やめることにした

口を開けたままぼんやりと安西先生の方を見てみると

いつも通りの小馬鹿にした様な、なにも考えていない様な微笑で

少し気が抜けながら、聞こうと思っていた事を聞く


「ガキの戯言だって笑う?」
「いいえ。それは私が判断して良い事ではなさそうですし」
「…そう」
「ですが、私が君の立場でしたら…まず第一に、自分が疲れていると思います」
「第二に?」
「そして第二に疲れを癒す為に、優しい優しい安西先生と遊園地に遊びに行こうと思いますね。今週の日曜日に」


優しいと言う所で、ウソ付けとツッコもうとしたけど

のどが渇いている(という言い訳)僕に

(言い訳に騙されたフリをして)ポカリを渡してくれたので

あながちウソではないのかもしれなかった





「…で?どうでしょう、君に向いたやり方ですか?」
「ん…いいかも」
「それは良かった」



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