その生白い曲線を描く形状の脚を眺めていると、唐突に口腔内につばきが溢れ出す
肌は上気し、目は潤み。唇の間から自然突き出す舌は痙攣するように震える
真皮の奥で密やかに脈打つ静脈に、もどかしく思いながらも舌をのばす
なぞる様に血脈を辿り、味覚に触れる血の酸い味は錯覚だろうか
白い肌を恐れるようにそっと口を寄せ歯を立てる
薄い皮を破り、滲んだ血に感じるは塩辛さ
硬い脂肪、肉に歯を食い込ませ、噴出す血を舌上に感じれば
口蓋を突き抜け脳に抜けるような甘く苦い鉄錆びの味
咽喉を伝いぬめり落ちていく生命そのものによって、生への執着というものを思い出しながら強くきつく吸いたてる
次第に勢いを下ろしていく傷口から口を離し
醜くなったそこを癒すよう、深い歯形に舌を這わす
幾ら舐めてももう元には戻らないと気付いたならば、今一度ピタリと歯形に合わせ
今度は躊躇い無く上下の歯が音を立ててぶつかるまでに食い千切る
またも同じ様に血を噴き上げる、しかし抉り取られた傷は前よりも更に醜悪になる
口に収まったほんの一片の肉
ゼリーの様な、だがそれとは全く異なる触感を持つ自身の肉
コリコリとしていて、上手く咀嚼出来ない
罪を犯す事を思い留まらせるかのように
それでも糸切り歯を使い数個の穴を開け、奥歯で擦り噛み潰す
味はよく解からない。ただ猛烈に美味いと感じる
未だ咽喉に絡む血を纏い、肉が胃の腑へと落ち込んでいく
完全な自給自足の半永久機関に感動の涙を流しながら
象牙に似た骨が見えるまで


何度でも自分へ口を寄せる
BACK