純然たる愛





だって、飛び降りなんてとても皮肉な死に方だ
人を見下す高い所から、その見下す所に落ちて死ぬだなんて
子供が死ぬにふさわしい方法だ。あっはは!!
さあそろそろ良いだろう
柵を乗り越えて縁に立つ
死の縁に立つってね。滑稽だ


頭から、飛び込む


ほら落ちた!
なんて笑える
さあ近づく近づく蟻共が
私も近づく蟻に近づく
蟻に近づいてくだらない人間に近づいてそして死ぬ
落ちる
落ちる落ちる
落ちる落ちる落ちるああああああああ!!!





…パチン


俺は携帯を閉じて
目線を下に落とす
今しがた終えた電話の主を
赤に塗れた彼女を眺める
一歩進んで手を伸ばす
ほんの一握りの彼女を拾い上げ
右のポケットに仕舞い込む
後ろを向いて帰路に着く
手を突っ込んだまま彼女を弄び
どう調理しようかと悩みながら


――――


じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ
風呂場で彼女が何かを洗っている
ばしゃばしゃ
何を洗っているんだろう?
もう二時間だ
何故洗濯機を使わないんだろう?
ごしごし
下着だろうか?
ざぶざぶ
でも、長すぎる
声をかけてみようか
ごとり
重い音
何?
「何を洗ってるんだ?」
「何も」

ごしゃごしゃ
ざばざば
「何してるんだ?」
「何も」
また、嘘
がしがし
「何をするんだ?」
「…」
音が止んだ
扉の前に立つ
曇りガラスでよく見えない
がちゃり
彼女
死んでる
自殺だ
包丁が落ちてる
これで死んだ
彼女が首を切ったのは包丁
じゃあ彼女が洗ったのは何?
何も無い
水も無い
彼女と包丁
解らない
そして僕は
重い彼女の体を抱きかかえ
何を洗っていたのかを考える


――――


僕は、生まれて初めて人を殺めようとしている
どうしても殺さなくてはいけない気分
僕は狂ってしまったんだ
ポケットの中にはカッターナイフ
人を殺すには十分で
だけど、あまりにも日常的に過ぎる凶器
ほら、前から女の子がやってくる
あの子だ、あの子にしよう
距離が近づいてきて
呼吸が早まる
苦しい
彼女の口が、動く
「お前も死ぬ」
え?
「怖いか?怖いだろう!!私を殺したら死から逃げられるとでも思ってるのか?無駄だ無駄無駄無駄無駄無駄なんだよ、何をやっても死はいつか必ずお前を殺す。偉業を成し遂げようとも人を何人殺そうとも!!動きが止まる呼吸が止まる思考がとまる心臓が止まる死は永遠の停止だ、消滅だ、一切の無だ!怖いよ怖いよママ。ママ、ママ、ママママママママママママママ怖いんだ怖いよ怖い!助けてママ!!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないでも死ぬ!!いつか死ぬ!!必ず死ぬ!!殺されるんだよ何かに。何か。何か、何か、何か?何だ?何が私を殺すんだ?時間か病か、それともお前か?!」
僕はカッターを握り締めたまま、彼女を置いて立ち去った
「僕だけが狂ってる訳じゃない」
みんなみんな、狂ってた
僕はなんだかほっとして
母さんの手料理を食べに家へと帰る






――――――――――――
思春期の人向けに
あんまり好きじゃありません
まあ…書いてて楽しいですねー中身が無いのって
あと男の子と女の子の話が殆ど無かったですし、補充に
教育に良くない話ですけれど。
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