「クリスマスイブに僕んち来るなんて、先生ホントにモテてんですか?相も変わらずフェロモンはムンムンですけど」
「いやあ今年のクリスマスは一人で静かに過ごそうと思ったのですけれど、自宅に居ると刺されそうで」
うわー!何で僕の家が避難所なんですか?!帰ってください!!」
「つれないですねえ〜まあ良いじゃないですか、お邪魔致します」
「上がりこまないでください!早く帰っ…あ、母さん」


『あらあら安西先生、いつも智裕がお世話になって』
「いえそんな…高屋敷君は学校でも品行方正で、世話を焼く程の欠点が在りませんよ。お母様の教育の賜物でしょう」
『いやだわ先生ったらお世辞ばっかり。あらいけないこんな所で立話しだなんて、上がって行ってくださいな、大してお構いも出来ませんけれど』


「という訳で、お邪魔しますね高屋敷君☆」
「…くそぅ」


(ガチャ)
「へえ…高校生男子の部屋だというに、綺麗な部屋ですねえ…流石女顔と言いましょうか」
「いや関係ない。っていうか包丁持った人が押しかけてきたら、僕安西先生なんか見捨てて逃げますからね!」
「心配無用です。浮気相手と勘違いされて刺されるのは君ですから」
わああー!!やっぱ帰ってください!!
「だから大丈夫ですってば…来るとしたら十人以上来ますし、同士討ちです」
「蟲毒になったらどうするのさ!」
「あ、客もいますしもっとでしたか」
「だから何の復職してんの?!」
「良いから良いから…ハイどうぞ、高屋敷君へクリスマスプレゼントです」
「え?あ、ありがとうございます…開けてもいいですかー?」
「どうぞ」
「えっとぅ…(ガサガサ)…わあ!すごいやこんなに大粒のダイヤが!金具も純金だし僕の名前も入ってるー…ってバカー!!
「ノリツッコミ上手くなりましたねえ〜、テレホンショッピングみたいで素敵ですよ」
「どうでもいいよ!バカバカ!!首輪じゃないですか!!
「違います、チョーカーです」
「チョーカーだとしても限りなく犬の首輪に近いチョーカーだよ!」
「あっはっは、似合いますねー。オーダーメイドにした甲斐が有りましたよ」
「ハめるなよ勝手に!苦しいですってこんなのいりませんよ!!」
「あ、捨てましたね?いけませんよ高屋敷君!人が折角あげたものをそんな無下に扱っては!!」
「説教できる立場じゃないのに!あーん!!」
「また泣くんですか、鬱陶しい…やれやれ、冗談ですよ。もう一つ用意してあります」
「え、そんなでかい箱どこに持ってたんですか…って重っ!!なに入ってんですかー?!」
「ん?ああ…開けて御覧なさいな」
「えー?…(ガサガサ)……コレなに?」
「収穫した稲を精米して籾殻を取り除いたもの、米ですが」
米って!どんだけ僕のうちが貧しく見えてんですか!?」
「おや、嬉しくありませんでしたか?確かご家族全員ご飯党だったと思いますが」
「少なくともクリスマスプレゼントにはふさわしくないです。…もういいや、母さんにあげてきます。お菓子とか持ってきますから」
「では私はその間にベットの下や本棚の家宅捜査を」
やめろよ!!



(ガチャ)
「センセ、コーヒーでよかったですかー?」
「ええ。ありがとう御座います」
「はいどぞ、ケーキも食べてください」
「ところで…高屋敷君はいつまでサンタクロースを信じていましたか?」
「えー?どうだろ…母さんが信じさせたい教育方針だったから、小学校の五・六年まで信じてたと思います」
「ははは、可愛いですねえ」
「先生は?」
「今でも信じてますよ」
「え?」
「私の家は【恋人がサンタクロース】という教育方針ですのでねえ」
「夢があるのかないのか解からない!!」
「プレゼントはブランド物」
「生々しい!!」
「まあ【殺人鬼がサンタクロース】よりはマシなんじゃないですか」
「え?ああ…そういえばそんな映画ありましたね、えっと、【サンタが殺しにやってくる】だっけ」
「…つまり【恋人が殺人鬼】ということですねえ」
「違いますよ!全世界の恋人達に喧嘩売ってんですか?!自分だって彼女と彼氏持ちじゃん!」
「いいえ別に?だって人を殺している点は否定しませんよ」
「そこは否定してくださいよー!!」
「そうですねえ…そろそろ皆さんウザったいですし……生贄にでも使いましょうかねえー…」
「(ああ神様、僕は関係ないんで地獄に落とすならこの性悪教師だけに)」
「それにしても、聖夜に交合うなんて日本の恋人くらいですよねえ〜」
「ホントですよね」
「ん?」
ああ!!今こうしている間にも、勘違いで他人と愛を語り合う大馬鹿達が沢山発生しているんだ。そして今はクリスマス!つがいが活発に活動しだす魔の聖典!!神様、この愚かな恋人とか言うトンチキ共にどうか許しを!哀れみを!!
「…高屋敷君、恋人がいなかったのですか?」
「は?いませんよー?なんか悪いですかー?」
「いえ別に…ただ」
「?」
「可哀想になあ…と」
「べ!べべベ別に僕は恋人なんて要らないし!愛なんて無くても生きていける強い人間だし!!」
「……そうですか」
「なにその眼ー!!」
「まあ、こんな女顔で頼りない男では、そりゃあ付き合いたくないでしょうねえ〜」
「なんですかその言い方ー!自分なんか女装マニアじゃん!!」
「確かにそうですけれど、私と付き合いたい人間なんて星の数ですよ」
「っー!!ムッカつく!!僕と先生となにがそんなに違うって言うのさ!?顔?金?フェロモン?!」
「…やれやれ。良いですか、高屋敷君?私に有って君に無い物は【自信】ですよ」
「は?」
「自分を愛しているか?自分を誇れるか?それが大事な事なんです。たとえば高屋敷君、君の自分で嫌いな所は何ですか?」
「えー?…体力無い所とか」
「もっとあるでしょう?他人は知らない様な、他人には知られたくない様な…」
「………ぅ、指咥えないと、寝れないとこが、嫌いです…けど」
「ふふっ、そうですよねえ?誰にでもありますよ、自分の嫌いな面が。…でもその嫌な面すらも愛せなくてはいけないのですよ?」
「…?」
「だってそうでしょう?たかが自分の欠点すら愛せない人間が、どうやって他人の欠点を愛せましょうか」
「…」
「誰かに愛を語るなら、先ず自分を愛しなさい。誰かの愛が欲しいなら、自分を愛して磨きなさい…それが【自信】です。そしてまた【魅力】なんですよ」
「…そんなこと言ったって、僕…人に自慢出来るような事なんてないですもん…」
「高屋敷君」
「…」
「…私は、君の事が好きですよ」
「うぇ?!」
「私だけではありません、君のご両親も友人も…君が好きだから君の近くにいるのです
自分には分からない良い面が他者からは見える事も、あるんですよ?」
「…安西先生…」










「…さて、面白いネタが手に入りましたねえ〜」
「え?」
「忘れない様にメモっておきましょうか。えー…【高屋敷君は指しゃぶりをしないと寝付けない】…と」
うわあああああ!!その為にいい話を!?!」
「それでは、そろそろお暇させて頂きます。クリスマスは実家で過ごす事にしているのでね」
「あの!さっきのカミングアウトは忘れて…あああ!!ま、待ってください安西センセー!!


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