ガチャ



「失礼しまーす。校長先生、安西先生がこの書類渡してきてくれって」
【うん?高屋敷君か。すまなかったな、菓子でも食べていくか?】
「え♪いいんですかー?お仕事中なのに」
【構わんよ、ちょうど休憩しようと思っていたところだからな】
「じゃあお言葉に甘えます。わー椅子フッカフカ!」
【最近調子はどうかね。勉学やら体術やら】
「うーん…そこそこです。校長先生は今日も全身にかかってる黒いモヤモヤでよく見えませんけど、元気ですか?」
【まあ可も無く不可も無く…安西教員は何をしていた?】
「心配しなくてもちゃんと書類書いてましたよー。あ、安西先生で思い出しましたけど、校長先生ってこの前安西センセのこと名前で呼んでたじゃないですか」
【ふん?】
「あれってやっぱり…」
【ああ、アイツは友人の息子でな。赤ん坊の時から知ってるよ】
「ええ?!そうなんですか!僕はまたてっきり愛人なのかと!!」
【…】
「へー、へー。知らなかった、じゃあ校長先生意外と年いってるんだあ」
【まあ若くは無いがな】
「そうだ、安西センセのちっちゃい時ってどんなんだったんですか?ただでさえ顔よく見えないから想像付かないし」
【人形の様に大人しくて可愛らしくて…食が細くて、野菜と果物と菓子しか食わんような…妖精の様に可憐な子供で】
「男の子の褒め言葉じゃないですね…って言うかええ?!ウソだあ今なんて人肉食いたがるような人じゃないですか!!」
【ま、まあ…それは当時からだが】
「どこが妖精なんですか!妖怪じゃん!!」
【昔は可愛かったんだよ。昔は…今が可愛くないとは言わんが、あんなに馬鹿でかくなって…】
「で、でも、校長先生よりは背低いじゃないですか」
【昔はもっと可憐だったんだよ……そうだ、アルバムでも見るか?】
「え、なんで職場にそんなものが?」
【あの頃は白いワンピースが似合って…】
「え?!なんでワンピースなんて着てるんですか!?その頃から安西センセって女装癖が!!?」
【いや、まあ…母親の趣味でな。ほれこれだ】
「うわ…どこのロリアイドルですかこれ?写真集?」
【可愛いだろう?】
「可愛いですけど、美人ですけど…なにこれ、女の子じゃん」
【こっちが普通の格好の方だな】
「あ、ちゃんと男の子の服もあるんだ……でもグラビアみたいな写真ばっかりなのは変わんないんですね」
【………】
「あれ?」
【…ううっ…】
「ま!まさか泣いてるんですか校長センセー!?」
【あああああああああ昔は可愛かったのに昔は可愛かったのに今では何でも一人で出来るようになって今では『氷室さん☆』なんて可愛らしい声で呼びかけてもくれなくてあああああああああ!!!!!】
「わー!わー!!校長先生しっかりしてくださいよう!今だって十分美人ですよー!!」



(ガチャ)


「氷室さん☆ちょっと息抜きしませんか?三日前から働き詰めでしょう。私氷室さんの為に軽食作ってきたのですよ
はいどうぞ、里芋の煮っ転がしとお吸い物と炊き込みご飯
氷室さん昔から和食が好きでしたよねえ…覚えてますか?昔二人で行った小料理屋。最近七代目に変わったそうでして、評判になっているらしいですよ?今度また行きましょうね
そうだ、仕事が一段楽したら二人で温泉でも行きませんか?

…あれ?」

【うおおおおおお聡美いいいいいい!!ああああああああああ!!可愛い!お前はいつまでも可愛いなあ!!おおおおおおおおお…!!!!】

「ど、どうしたのですか氷室さん?!あ、高屋敷君…君ですか氷室さんを泣かせたのは?」
「いや、たぶん…安西先生だと思いますよ…」










「…っていうかなに?このほのぼの話」

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