ガララ




この世を余す事無く照らし尽くされる全知全能なるヒトムグラ安西バモイドオキ神様!聖なる地の奪還に出かけられるそうですね?!」
「…?」
「嗚呼!ヒトムグラ安西バモイドオキ神様のお役に立つ事こそが僕の無上の喜び!!どうぞその偉業の為に僕の血も肉もお使いくださいませ」
「あー…まだ解けてなかったんですか」
「え?…ああそうでしたか!病を癒し、人の心を平安に導く聖なる地が少ないとおっしゃられるのですね!!解かりました、世界の全てをヒトムグラ安西バモイドオキ神様のお膝元になるよう、永遠の理想郷ユートピア桃源郷サンクチュアリ!!エデンを製作致します!!どのようなご命令にも従いますヒトムグラ安西バモイドオキ神様!僕は如何様にすればいいのでしょう?どうぞ何も解からぬ未知なこの僕にご命令を。……解かりました!子を生せばいいのですね!?その子をヒトムグラ安西バモイドオキ神様に使える天子として育て上げ、世界を創造し直せばいいのですね!?なんて光栄だろうヒトムグラ安西バモイドオキ神様の血を引く者達を胎に宿せるなんて!!さあ聖なる過酷な修行を全て終え、ヒトムグラ安西バモイドオキ神様に最も近い場に到達した僕に!この僕に!!存分に子種を御注ぎくださいませ!!!
「ん?ああはいはいそうですよ〜…まあその前にこれを飲んで下さいな」
「聖水!聖水ですね?!ヒトムグラ安西バモイドオキ神様が身を清められた後の水ですね!?」
「ええ、ええそうですよ。だから大人しく飲んで下さいね?」
「もちろんです!ああ…ヒトムグラ安西バモイドオキ神様の寵愛を一身に受ける事が出来るとは僕はなんて幸福なんだろう………ん……は、あ…なんて甘露な…」
「…気分はどうですか?」
「ハイ。なんだか頭がスーッと……頭が。あたま…が?………あ…?」
「どうですか?」
「ああああ………………………あ?!安西先生!?
「やれやれ…」
「いい加減にしてくださいよー!職権濫用にも程がありますよ!!もう僕家に帰らせて…?あれ?」
「今日は月曜日で、もう放課後ですよ」
「え?え?あれ?なんでここ二日くらいの記憶が無いんですか?」
「さあ、どうしてでしょうねぇ〜」
「……?鞄の中にリンとか、塩酸とかが入ってる…」
「薬局でも普通に買える物じゃないですか、気に病む事ありませんよ」
「あと、ビニール袋も…【アセトニトリルイソプロピルアルコール】って書いた紙も」
「何の事でしょうねぇ?」
「…昨日、電車に傘を持って行った気がする……」
「備えあれば憂いなしですよ」
「ビニール…鞄にビニール袋三パック持って電車に……中身入りで……?…中身?なか…み?」
「マグロですか?マグロの中身。味、結構良いですよねえ」
「……異臭…呼吸系の障害………殺傷力…高し」
「…高屋敷君」
「安西先生……僕、僕………何を、したんですか?」
「…大丈夫ですよ、何もしていません……ちょっと疲れているだけですよ。今日はもう家に帰ってゆっくりお風呂にでも入って、ぐっすりお休みなさい?」
「そう…ですよね。僕は……僕は何もしてなんか…ないですよ、ね?」
「ええ、もちろんですとも!それではまた明日、高屋敷君?」
「はい…さよなら、安西センセ……」



ガララ、ピシャン












「…さて、揉み消しでもしましょうか。死者がいないから大した事は無いですけれど、ね」

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