「…ふう」
「おや高屋敷君、どうしたのですか?大工の倅、イエズスキリストが受けた受難を我が身に感じたような顔をして。赤紙でも届きましたか」
「タチの悪い冗談やめてください。それに前から言おうと思ってたけど安西先生の喩は悪意が滲みすぎです」
「そうですか?」
「…はぁ〜…」
「で、結局どうしたのです高屋敷君?」
「僕、お兄ちゃんが欲しいの」
「…」
「あ〜ぁ、お兄ちゃんがいたらよかったのにー。…って先生?なんで拳を固めてるんですか」
「いえ…殴ろうかどうしようか迷っていまして……嗚呼どうしましょう?」
「殴らなくていいよ!なんで殴るのさ?!」
「そんなにもあからさまなショタコンお兄さまお姉さま狙いの発言を聞いて殴らない訳にはいきませんよ」
「別にそんなつもりじゃないよー!!(ドゴス)あいだあぁぁ!?!
「くっ…!!幾ら客寄せの為のキャラ付けだとしても、腹立たしくてこの腕が…っ」
「し、してないですよそんなのー…」
「黙りなさいこのウズ虫、下等生物。卵で生まれたのですから兄など数千人いるでしょうよ」
「………優しいお兄ちゃんが欲しい…」
「何を幻想を夢見ているのですか、優しいとは=ショタコンという意味ですよ」
そんなのは僕の願うところのお兄ちゃんじゃない!!僕はねー!誰かに優しくしてもらいたいんです!可愛がって欲しいんですー!!
「そんな事を言って良いのは小学生までですよこの馬鹿。眼ン玉引き摺り出されたくなかったら黙ってなさいこのゴミ虫。複眼を一つ一つ潰されたいのですか」
「………ぐすっ…」
「泣く事は無いじゃないですか」
泣くよ!普通泣くよ!!うわああーん!!僕だって人間なんだから愛される資格くらいあるのにー!!」
「え?そんなもの、愚かな高屋敷君にあったんですか?生きているだけで公害を生む害虫だというのに?」
血が!眼から血が!!血の涙が!!言っとくけど先生の虐待のせいで愛に飢えてるんですよ僕!?」
「ほう、私のせいで…?」
「あのねあのね?安西先生と僕の間に何が足りないかって、愛が足りないんですよ!!」
「…」
「今先生が考えてるのとは違いますからね?」
「では、どういった意味で?」
「まあ教師から生徒への愛情もないけど、なんていうか、人間愛が足りない!!」
「愛されたいのなら、それなりの対価を払いなさい」
「わー…売りやってるジゴロは言う事が違いますねー…」
「嫌味は止しなさい?高屋敷君。私は教師という神聖な職業についているではありませんか」
「神聖?どこが?」
「…祭壇に生贄、いや供物を捧げたり…ねえ」
「教師の仕事じゃないよ!!」
「更に言うなら愛するだけでも対価を払うべきなんですよ?愛される側は、常に何かを奪われる」
「わー…実感こもってますねー…」
「因みに、受ける愛は歪んでいた方が好きですよ」
「…」
「その歪んだ思いをを弄び、痛め付け、突き落とし、少しずつ少しずつ歪みを大きくして……最後には自重で粉々に☆」
「…センセの性格の方が歪んでます」
「ふう…私の愛はどうして高屋敷君に伝わらないのでしょうか?」
「それが本物の愛じゃないからです安西先生。どの口でそんな言葉を?」
「加虐は立派な愛ですよ」
「やっぱり歪んでる」
「高屋敷君、君は愛に飢えてると言いながら私の愛を受け取っていないではありませんか」
「だから、加虐はいらないったら」
「ふん?…んー…ではどんなものが良いのです?」
「そりゃ安西センセは教師なんですからー上の立場として僕の面倒見てくれたりとかさー?」
「面倒…」
「そーですよぅ。進路探してくれたりとか…って、え?なんですかその注射器?!
「ちょっと腕を貸して下さいな高屋敷君」
「は、離して!静脈を探らないで!?
「少し眠っていて下さいね」
なんで?!っ痛…!………う…あ……ぁ………」












「……おや、起きましたか高屋敷君?おはよう御座います」
「………」
「まだぼんやりしていますねえ〜…」
「……こ…っけふっ!えふ!!ふうぅっ!?!」
「ああ、駄目ですよ高屋敷君…その口枷は外れませんから、引っかいても無駄ですよ?」
「…?…」
「気管の奥にプラスチック球を入れてあるのです、慣れれば気にならなくなるでしょう」
「っえ…く、う、…け……」
「あっはは!おやおや…可愛いお口をパクパクさせて」
「ひ、ぐ…ひっ…ひっ……か…っ…」
「まるで金魚の様ですねえ?ふふふ、あは!!あはははははははは!!!」
「…くっ…?…ひ……?…かふ…っ…?…」
「はは、驚きました?息が吸えなくても苦しくないでしょう?人工心肺に繋いであるのですよ」
「か、かひっ……っ…!?」
「よいしょ…っと。…ふふふっ…ねえ高屋敷君、水槽に敷くのはビー玉が良いですか?それとも玉砂利にしましょうか?」
「…!……!!」
「っと、こらこら暴れてはいけませんよ…チューブが外れてしまいます」
「く……けふっ…!……」
「それに…暴れたところで……逃がしはしませんしねぇ」
「…!?」
「やっぱりビー玉にしましょうか。高屋敷君なら、色とりどりに輝くビー玉に負けない位に可愛いでしょうからね?」
「…っえ…っ……く」
「さあ、ヒラヒラ踊る前に奇麗なおべべに着替えましょうねぇ…絣で織られた、真っ赤な…」
「…ひ…」
「大丈夫ですよ、高屋敷君。私だって子供ではないのですから、責任を持って面倒をみて、可愛がりながら飼ってあげますよ………そう」
「…」












「…最期まで……ね」



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