「あのねあのねー安西センセー?」
「ん?」
「あのですね、プレーリードッグっているですよね?」
「はい、いますねぇ」
「それでねー、そのプレーリードッグを吸う掃除機があるんですよぅー!」
「……?」
「なんか、プレーリードッグ増え過ぎちゃってるんですって。それでー集めなくちゃいけないからー巣の穴におっきい掃除機の先っぽ突っ込んでーびっくりしてきゃーってなってふんばってるプレーリードッグ吸い込んで、そのプレーリードッグはホースの中うわーってなりながらしゅるしゅるすっ飛んでってー、最後檻になってる所にすっぽーんて出てくるんだけど、そのままだと勢いで壁にぶっかっちゃうでしょ?だから壁にスポンジ貼ってあって、ぺしってなる安全設計なんですー!その吸われてるプレーリードッグすっごい可愛いの!やーんってなってて可愛いのー!ね?ね?可愛いよね?」
「…か」
「か?」
可愛い!!最高に可愛いですね!!
「でしょー♪あのね、吸われてるおしりとか超可愛いの!必死に吸われないようしがみついてふんばってるのもすっごい可愛いの!!」
「ああ、駄目です駄目です高屋敷君、可愛過ぎて可愛死してしまいます!」
「僕それで死ねたら本望ー♪」
「じゃあ取って置きの話をしてあげましょう、以前知り合いがアライグマを飼っていたのですが」
やー♪可愛いー!
「でしょう?!可愛いですよねえ☆」
「うん超可愛いー♪…で?で?」
「それでですねぇ、犬のように鎖付き首輪を付けて杭で地面に止めていたのです。そうしたらその鎖の半径以上に行きたがって、二本足で立ち上がって鎖をビンビンに引っ張りながら両手を差し出してぐるぐるコンパスの様に円を描いていたのですよ」
いやぁーー!?!可愛いめっちゃ可愛いーー♪」
「目の前に壁があるパントマイムみたいになりながら『あー』な感じに!本当『あー』と言ってるようになりながらくるくる回ってもう頭が悪そうで無駄な頑張りで可愛くて可愛くて!!


【…女子高生か、お前達は】


「おや、学校長。いつの間にいらしてたのですか?」
【巣穴に掃除機を突っ込む辺りからだ】
「ねー好調センセも可愛いと思いますよねー?」
【ああ可愛い可愛い…そんな事よりも安西教員、例のアレはどうなったんだ】
「ん?あ、アレですか。会長君がアンケート作成をしてくれていますよ」
【ふん…なら良い。…では、遊んどらんで仕事をするようにな】
「ふふっ、はい…頑張りますよ」




「…校長先生も大変ですねー、安西先生が遊んでばっかりだから」
「失礼な子ですねえ…仕事はちゃんとやっていますよ」
「ね、さっきのアレってなんのことですか?」
「うん?…ああ、実は遠足をしようかと話が出ているのですよ。まだ決定はしていませんけれど」
「遠足?!やったー♪どこ行くんですか?」
「入場者より退場者が少ない事で有名な所なんですけれど…」
「中でなにが起きてるんですか?!」
「入園チェックではカメラ類が預かられます」
「記念が残せない!」
「携帯類も預かられます」
「外部と連絡が取れない!!」
「パーク内には人骨に似た物がやけに転がっていて」
「飽くまで似た物なんですよね?!」
「お守りを持って入場すると爆発するので危険です」
「神々の力でも防御不可?!」
「口から泡を吹いて白目を剥きながら痙攣しているのがスタッフ」
「業務を果たせなさそう!」
「カラフルなレンガで彩られた地面には、爪痕が沢山ついています」
「悶え苦しんだんですか?!誰が!?」
「上空にはやたらとカラスが飛び交っていて」
「なにを狙ってるんですか!」
「着ぐるみのキャラ達は、鏡に姿が映りません」
「邪悪な生き物だ!!」
「パレードはSMショー」
「お子様の目に毒だ!」
「それ以前にゲートをくぐった途端子供は何かを察知して泣き出します」
「なにを?!」
「入場者の三割が唐突に奇声を発して壁に全力でぶつかって死亡するのが問題」
「短時間でそんなに精神を痛め付けるの?!」
「パーク内の食事所は肉料理しかありません」
「アメリカ人だ!」
「何日か客の入りが悪いと腐った肉」
「それはつまりまさか人肉!?」
「一人でトイレに入ると着ぐるみキャラにカツアゲをされます」
「ファンタジーもなにも無い!!」
「持ってる現金が少なければ噛み殺されます」
「獰猛だ!!」
「乗り物の動力は全て人力で」
「都市伝説っぽい!」
「動力室へ見学に行けば蒸発した筈のお父さんに会えるかも!」
「おとうさーん!!」
「これからはずっと一緒ですよ出られないから」
おかあさーん!!



「…とまあ、こんな感じのテーマパークに行こうかと思うのですけれど。どうです?」
絶対行かねえ!!
「そうですか?でも、一応下見に行かなくてはいけないのです」
「ふーん…まあ安西センセなら大丈夫じゃないの。いってらっしゃーい」
「いつ私が行くと言いました?」
「へ?」
「これ、フリーパス券です」
「え?」
「パーク内地図と財布です」
「…え?」
「高屋敷君、さようなら☆」
せめて行ってらっしゃいって言ってよー!!

BACK