「…そろそろ下りてはくれませんか高屋敷君?いい加減重くなってきました」
「いやあー!!絶対やあーー!!変な気配してるから死んでもヤダー!!」
「じゃあ殺して下ろしましょう」
「ヒイ下ります!下りますから!!」
「最初からそうすれば良いでしょうに…よいっ…と」
「うっうっ…もうやだあ…変な物音してるしもうやだぁ〜…早く行って早く帰りましょ安西センセー!!」
「あ、少し待って下さいな。…えー…と、ああありましたねぇ」
「わあぁ?!なんですかその鎌!?死ぬのいやあー!!」
「ははは、いやですねえ…高屋敷君に使うのではありませんよ。…よっ(ザク)」
「え…?安西先生今、しゃがんでなに切ったの?」
「ん?ああ、これですよこれ、地面から突き出て足首を掴んだ手を」
「ぎゃぅあああァァぁぁアア!!!いやあもうだから地面に降り立ちたくなかったのにーーー!!!」
「高屋敷君握手をしましょうか、ほらほら」
「それセンセの手じゃないって言うか肘から上が存在してないひゃああ近付けないでギャーーー!!!」
「あははははは!!」
「メチャクチャ楽しそうだなアンタ!?」
「それはもう君を怯えさせる事が私の生きる糧ですから。さあもっともっと叫んで下さいな☆」
「ふざけんなこのクソ教師!!ってうあああああ?!?ななななに懐中電灯消してんですか見えない恐い死ぬー!!!」
「…おや、懐中電灯が切れました」
「は?!う、うそだ!ちょっとかしてください!!………あ」
「ほら、切れているでしょう?」
「…やっ…な、なんでこんなとこで切れんの…?だって、だってこれから旧校舎に入るのに…」
「んー…まあ、懐中電灯なしに今来た獣道を引き返すのは難しいかもしれませんねえ」
「やだ…暗い、暗い暗い恐いぃーー!!ねえもう帰りましょう?ちょっと位転んでもいいから引き返そ安西先生…ってあれ?センセ!?ど、どこ行ったの安西先生ーーーー!!!」
―――――――――――――――
あうう、安西先生どこに行っちゃったんでしょう
って言うか先生確実にワープした
懐中電灯もないし、一人だし
でもさっき手が突き出た所とか触られた所とか、戻る気になんないし
取り敢えず、中に入ろうと思います
他の生徒の人、いるかな…
(ギギ…ギイィ……ガシャン!!)
「んっ…けほ……ほ、ホコリっぽい……なんか校舎内、外観よりも倍以上広い気がするけど。…下駄箱、ってことはここ正面玄関?」
(………コツ……コツ…)
「ひっ!?……あ、あれ…?安西、センセ?」
「…」
「ああもう安西先生!!?どこ行ってたんですかー?!僕もうすっごく恐くて…」
「……高屋敷君…君が恐いのは、闇ですか?それとも自分とは違う次元に住む、異形ですか?」
「…センセ?…ど、したの…?」
「どちらも未知を基礎に置く根源的原始的な恐怖。ああ、幼い君は何も知らないのですね」
(…ギ…ギュイイイィ……ィィィー…ン…)
「先生…なんの、音?」
「本当に本当に怖いもの。それは、同じ次元に住みながら別の次元を生き、決して理解出来ない世界を見る、悪意。…つまり」
「………いや…やめて」
「生きている人間」
「…ぁ…っあ、ああ……」
「怖いですか?怖いでしょうねえ…ふふ、良い事を教えてあげましょう。無知で無力な君が、この恐怖から脱するすべは一つだけ……逃げれば良い」
「ぅ…ぁ」
「さあ、走りなさい仔兎君?さもなければ、恐い狼がグルグル回る大きな牙で、君を引き裂いてしまいますよ?」
「い、いやあああああああああーーーーーー!!!!」