「…っ…ひぐ…ぅ、んえぇー……」
「……何なんです高屋敷君、まだ五メートルも歩いていないのに泣き出すとは……鬱陶しいですねえ、もう少し離れて下さいな」
「だって、だって…明らかに変ですもん、おかしいもん」
「何がです?」
「息苦しいし、なんかピリピリするし…絶対なんかいるー…ふぁぁあーん!!」
「ああ、そういえば…昔、合戦場で多くの名立たる戦国大名が殺されてその戦いに負けた者が処刑された場所で時代を経てから近代戦争で兵士民間人両方に多くの死者を出しその後墓地になった後潰して精神病院……で、その跡に建ったのが旧校舎です」
どれだけいわく付きなんだよ!!なんでそんな土地に学校を建てようと思っちゃったの?!」
「意外に多いらしいですよ?学校などの公共的なものでないと買い手が付きませんし、校舎が立てられるほどの広さで安い土地となると…ね」
「あーん!!安西センセがいじわるするよぉー!!」
「はいはい泣かない泣かない…ほら、手を繋いであげましょうねー」
「…ぐす…っ…もう怖い事言わない?」
「ええ、君が嫌なら。……さ、進みましょう?あまり遅くなっては、心配をかけてしまいます」
「は、離さないでね!絶対離さないでね!?」


―――――――――――――――


「…」
「ね…安西センセ、なんか喋ってくださいよぉ…静かすぎて恐いよー…」
「うん?ああ…そうですねえ、話しながら歩きましょうか。えー…と…聞いた話ですけれど


ある夏休み、男女二十人ほどで肝試しをやる事になったそうです
男女二人でペアになり、五分づつずらして出発としました
廃墟を歩くというそれは、十五分程度で回りきれるコースでしたが、四組目が出発しても一組目は帰ってきません
女の子が怖がってあまり進んでいないのだろうと思い、そのまま続けたそうです
ですが、八組目が出発してからも、どの組も帰っては来ませんでした
九組目の二人は『何かで進めなくなってるのかもしれないから、行って連れて帰ってくる』
そう言って出発して行きました
十分後、途中まで進んで帰ってくるならとっくに戻って来ている時間です
十五分後、誰も戻ってきません
二十分後、最後に残った十組目の二人、女の子は怖くて泣き出してしまいました
男の方が『やっぱりおかしい。俺が行って来るから二十分経って戻って来なかったら警察に行け』
そう言って、一人探しに行きました
二十分後、男の子は帰ってきません
それでも三十分待ち、結局警察に行ったそうです
警察官と女の子が廃墟に入り、コースを一つ一つ見ていきます
最後に入った部屋。そこで見たものは何だと思いますか?

それは天井から揺ら揺らと垂れ下がる、友人達の首吊り死体…」


うわぁーん!?!!あぁーん!!!恐い話しないってさっき約束したのにー!
「おやおや、怖かったですか?いやあ脅える高屋敷君は本当に兎に似ていて可愛らしいですねぇ〜」
「いやー!!いやぁー!!怖いのいやあもう帰るのー!!」
「ああよしよし…手は離しませんから大丈夫ですよ」
「ぅやっ…あの、センセ…手を離さないでとは言ったけど、腰に手を回してとは言ってないんだけど…」
「…良いではありませんか、丁度人気もないですし食べてしまおうかと」
「ちょ…マジでやめてください安西先生…これ以上脅えさせないでよ…っぎゃあぁあ!?!どこ触ってんだこのセクハラ教師!!


―――――――――――――――


「…っもう!こんな所でまでセクハラしないで下さいよね!!まあおかげで恐いの忘れちゃいましたけどー…」
「ええ、まあ…そうなのでしょうけれどねえ」
「?なに?なんでそんな歯切れ悪いんですかー?」
「言っても、良いのですかねぇ?」
「なになに?気になりますよぅ」
「今から言う事は正真正銘、嘘偽り0で言うのですけれど…」
「うん」
「…私、腰に手を回しても、いけない所を触ってもいないのですよ」
「………え」
「…誰に、触られたのでしょうね」
「…ぃ」
「ん?」
いやああアアぁぁあァァァァーー!!!やめて助けてお願い触ってくださいセンセむしろ抱いてください安西先生!!
「随分とまた爆弾発言ですねぇ高屋敷君…」
「はやく、はやくして安西先生はやく抱っこしてセンセはやくしてくれなきゃぼくもうむりもうよくみえないしきこえなくておねがいはやくぁああああああああああああああ…!…!!
「何と言いましょうか、君が怖いですよ高屋敷君。やれやれ…本当に手のかかる子ですねえ〜……」

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