いつものように進路指導室のドアを開けると

いつものように安西先生が中に居て

いつものように微笑みながらも

普段と変わらぬはずの挨拶は無く

先生は生肉に向かって祈りを捧げていた




「嗚呼高屋敷君、こんな姿になってしまって。小さい体がますます小さくなってしまったではないですか…恥を知りなさい恥を
ですが、私は不安でたまりませんよ、生前から愚かしい君の事ですから死後は益々愚かしく愚鈍になっているのでしょう?死んだ事に気付いていないのではないかと気が気ではなくて…
ああ…ああ、困ってしまいました。私は神信論者では無いので、祈るのはサタニエルさんしかいないのですけれど…
君が地獄に導かれてしまうなんて我慢が出来ませんよ!!
何故?決まっているではありませんか、私が虐める事が出来ない高屋敷君をサタニエルさん一同は虐める事が出来るのですよ?まったく持って許しがたい出来事です。そんな事になるのなら地獄なんて、この私の力で破壊してしまいましょうかねえ?」




「その必要、全然無いですよ安西先生…」
?!?……ああ高屋敷君!やはり気付いていなかったのですね、この鈍重な人類の恥!!」
「違います、ホントに生きてんですよ…なに?その肉片。誰だったのさ?」
「……そういえば、死んだにしては生体反応がありますしねえ〜…もしかして人違いでしたか」
「もしかしてもなにも、そうですよ」
「そうでしたか…それはそれで、少し残念ですねぇ」
「……まあ、笑いながら跪いてた時点で解ってたけど」
「では、この肉は高屋敷君ではないのですね…仕方が無い、犬にでもくれてやりましょうかねえ」
「どういう状況でその人は肉片になったんですか?ってか止めてよ。犬もその人も可哀想だよ」
「はい高屋敷君、あーんして下さいな☆」
いや僕かよ!?食べないし犬じゃないですー!!」
「じゃあ今夜のおかずに」
「しないでください」
「それでは、高屋敷君が別な意味で今夜のオカズに使いますか?」
「僕ネクロフィリアの趣味無いんで、全然いらないです」
「残念です。……ああ、園芸部で肥料にでもしてもらいましょうかねえ〜?花壇でキチガイナスビ栽培のお世話になっている事ですし」
「でも、今日一年の体育で大量に死体が出来たから、いらないと思いますよー?」
「ふん?そうでしたか…じゃあどうしましょうねぇ?少し痛んできていますし…供物にも使えませんねえ」
「捨てちゃえば良いじゃないですかー」
「それもそうですねぇ」
「ゆ、床に捨てないでくださいよー!!」
「ああ、先生うっかりしてました。踏んだら滑って危なかったですねー」
「いやもっと死者の尊厳的な…やっぱもういいや」
「死者の尊厳?生者にすらない物が、どうして死んだら出てくるのです?」
「もういいですよう…」
「…」
「あれ?センセ、なに考え込んでるんですかー?」
「死んだら…ねえ?……成程」
「な、なに?なになに?」
「高屋敷君。男としても人類としても生物としてすら尊厳が欠片も存在していない高屋敷君?」
「は…はい?」
「是非とも実験したい事があるのですけれど、協力を
してたまるかああああ(ガララピシャン!!)ぁぁぁーーー……!!!

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