(コンコン…ガチャ)



「失礼します、学校長。今年の進路状況の話を…」
【うむ、書類が上がったか……ん?なんだそのくっついとるのは】
「あ、これですか?高屋敷君ですが…どうやら恐ろしい目に会うか見るかしたようでして、さっきからひっついて離れないのですよねぇ」
「…ーっ!!」
【ほう?何を見たのだろうなあ】
「さあ…聞いても震えっぱなしで答えてくれませんので。…高屋敷君?何があったんです?」
!?ーーっ!!!」
「……まあ、そんなに首を振って否定するなら何も聞きませんがね」
「ぁ…あうっ…あ、あ……ぁの………」
【む?言うのか?】
「何です?ゆっくり話して御覧なさい」
「か…カニ、カニが…ー……っ…」
「…?」
【蟹?】
「ハサっハサミでっ!ハ、ハサミっでっ!!?!」
【…?…解からん】
「よしよし、良い子ですから深呼吸しましょうねえ高屋敷君…ほら、お水飲みなさい?」
「んっ…んく……ん、はぁ…」
【鋏か…しかしそれだけで蟹と決め付けるのはどうだろうな?ザリガニかも知れん】
「学校長、高屋敷君を混乱させないで下さいな…」
【テッポウエビかも知れんなあ】
「氷室さん?」
【仮説だ。怒る事はないだろう】
「やれやれ…高屋敷君?喋れますか?」
ふぁっ!?あ、あの、ハサミがハサミでハサミのハサめばハサめるときっっ!!
【…すまん、聡美】
「いえ…」
「あのっ目が!目が十四個あって、変なもじゅもじゅって音してて、変なめちょめちょれろれろした角って言うか触覚って言うかトゲって言うかがすっごいいっぱいね、れにゅらぁって生えてて!!すごいすごくて、すごいキモくてすっごい怖かったんですー!!」
【安西教員、私はまったく解らなくなったよ。主に擬音でな】
「私もです、そんな生き物魔界にも居たかどうか」
【少し幼児性に過ぎるんじゃないか?子供は自分特有の言語を持つというからな】
「あはは、可愛いじゃないですか」
「ねえ聞いてよ!!」
「あーはいはい、で?」
【そいつが何を?】
「それで、周りの生徒食べちゃったんですよ!!」
「普通じゃありませんか」
【うむ】
「違うの違うの!!食べ方が異常なんですったら!」
【ほー】
「どの様にです?」
「なんかね、口も三個くらいあってね、一個目の口は…なんかなんか!くちゅぱあって開いたら真っ赤でめにゅめにゅした舌みたいなんだけどえらいことなっがいんですよ!!えるーんって感じに長いんですよ!それで、生徒二三人くるくる纏めて縛って、そのままじゅるじゅらって食べちゃったんですよー!!」
【…なあ安西教員】
「学校長、擬音はもう突っ込まないで下さいな」
「それでもう一個の口はー上の方に変な液が出てくる穴があって、そこからばぶしゅうって出た変な液でね?生徒沢山溶かしてぶじょるらって啜り込んじゃたんです!!それで、口の中でめじゅってしておぐしゅらくちゅくちゅって」
【関西出身かこの子は】
「得ろ漫画の読み過ぎなんでしょうか?」
【ああ、昨今の男性向けの擬音は理解不能らしいからな】
「最近は少女マンガも酷いですよねえ〜。規制は必要ですよ」
「それでそれで、最後の口は、歯が一杯生えててそのまんまストレートにかぶりついたり丸かじりしたりでそりゃもうすっごい音がするんです!!生徒の大腿骨やら頭蓋骨やら肋骨三番脊椎仙骨尺骨橈骨腓骨中足骨その他諸々骨が砕けてえごきゃがちょぎちぎちゃかじゃうるさいんですけどでもそこに脊髄とか肺の上葉中葉下葉空腸胆嚢尿管副腎気管支脳髄脳漿眼球網膜水晶体がくちゃくちゅにゅるにぇれおぷくぷ擂り潰されてまざくりあっていい感じにがちゅくぴゃぎちょなちゃごきゅごれえごちゃぎちゃげちゃちゅちゅくちゅくごらるらららららららららららららららあっていい感じの音を出しててすごく滅茶苦茶だったんです!!」
【…規制が必要だな】
「すみません学校長、少し待って頂けますか?」
【?うむ】
「高屋敷君、ちょっとこっち向きなさい?」
「それでそれで僕もちょっと食べられても良いかなあって思って…え?先生そのガラス灰皿なに?」


「すぐに直りますからね☆」




(ドゴス!!)




「…はっ!?あれ?僕なんか頭が痛いですよ先生?!なんかあったの?!?」
「いえ特に…」
【なあ】
「そうかな……あ!で、で?あの生き物何なんですか?」
「あー、それなら学校長のペットですよ☆」
ペ!?
【成る程、あいつに会ったのか…いやなに、少し甲羅干しの為に散歩させていてな】
「全くもう、酷いですよ高屋敷君?あんなに可愛いではありませんかロゼリアちゃんは」
うわあああーん!!変なペット飼わないでくださいー!!


















「学校長?高屋敷君が言っていたのは、もしかして、例の…」
【うむ…】
「…急いだ方が、良さそうですね」
【ああ、その様だな】

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