カララ


「安西センセこんにちわですー!…あれ?」
「おめでとう御座います高屋敷君、ハイどうぞプレゼントですよ〜」
「ふえ?…あ、え、…う?ぁ…腕時計?ありがとーございます……???」
「さあさあケーキも用意してありますので、お腹一杯食べて下さいな☆」
「え?え?なになに?今日なんか記念日?付き合って三ヶ月目とか?」
付き合っていませんよ気色の悪い。…そんな事より何を飲みたいですか?コーラもガラナも牛乳も買っておきましたけれど?」
「え、あ…ガラナ……じゃなくて!!なに?僕なんか褒められるような事しましたっけセンセー?」
「はは、何を馬鹿な!君が手柄を立てられるような事がこの世に存在されては、まったく堪りませんよねぇ」
「…祝う気が無いのに何で祝ってんの?僕の誕生日まだまだ先ですよ、進級祝いにはもう遅いし」
「で、時計はどうです?気に入って貰えましたか?」
「あ、はい!サイズも合ってますしすごくカッコいいです!!なんかよくわかんないけど取り合えずすっごく嬉しいのは確かですよう。安西センセ、ありがと♪」
「それは良かった」
「うん。……あの、なんでくれたんですか?」
「別に祝う理由なんてありませんよ」
「はあ?なに言ってんのかぜんっぜん解かんない!先生宇宙人?」
「まあ何と言いましょうか……ああ、『なんでもない日バンザイ!!』ですかね〜」
「安西先生、イカれてると思ったら今度は帽子屋まで始めたんですか?三月ウサギと?」
「不思議の国のアリスに詳しい女顔男子高校生ですか高屋敷君。気持ちが悪いですねぇ…と言うよりも、口が過ぎますよ」
「ギャー痛い!ギャー!!ギャーーーーーー!!?!
「まったくまったく、すぐ調子に乗って…困ったものですねえ〜。まあ良いから食べなさい高屋敷君?」
「う…うん……肘が痛いけど」





「でー?なんでなんでもない日に祝うんですかー?いくら理由ないったってそれはあるんでしょ?」
「あー…ま、大した事じゃあありませんけれどねぇ…」
「いいじゃないですかー。教えてくださいよぅ」
「いやあ、私は誕生日とかの記念日にプレゼントって、嫌いなんですよねえ」
「へー?なんで?」
「祝われるのが解っていて当然渡すべき贈り物なんて、お互い面白くとも何とも無いではありませんか。マンネリで…ねぇ」
「そりゃそうかもしんないですけど」
「貰う方の期待というのもも正直、興醒めですよねぇ…意地汚いというか何と言おうか…」
「い、言い過ぎですー…」
「まあそんな訳で、こうやって何でもない日に贈り物をするのが一番好みなのですよ。相手が不意打ちの幸運で純粋に喜ぶ姿はとても愛しいものです」
「…」
「驚き戸惑いながら向けられる笑顔は素敵に輝くのですよ、愛の告白を受けた時の様にね……記念日の贈り物が薄れゆく愛情への戒めだとすれば、何でもない日の贈り物はただ愛情を伝えたいだけの…幼子の様に素直な感情。その軽さ故に貰い手も打算無く微笑み、お返しとしてでなく、自分の愛情を伝える為に贈る物を探すのです」
「…」
「そして私の願い通り。高屋敷君、君は素敵に微笑んでくれましたよ」
「……ぅ」
「ん?」
うおげええぇぇー…
「あー、拭いておいて下さいね」
「き…気持ち悪…なにそれ、耳から砂糖食べてる気分になった。キザったらしいなあもう!!」
「ははは、高屋敷君は本当にしぶといですねぇ〜、私の口説きで落ちないのは君くらいのものですよ?」
「落ちてたまるか!僕にしてみたらそんなクサい台詞で落ちる人の気が知れないですー!!」
「それはまあ、そこらの男性では引かれるでしょうけれど…ふふっ」
「このナーシサス野郎!狂気に飲み込まれてしまえ!!
「物置に閉じ込めますよ高屋敷君」
「あわわ、せめておやつ抜き程度で!!」
「今食べているではありませんか」
「…あ、食べてると言えば…いつものパターンでいくとーセンセが妙に優しい時は毒が入ってるんですけど、今回はどうなんですか?」
「思い切り頬張りながらなんて事を聞くのですか君は?疑い深いのか無邪気なのか、どちらかにしたらどうです。入ってませんよ」
「そうなんですか?」
「ワンパターンになりますし」
「そっかー」
「ですがそうすると、オチが見当たらないのですよねえ〜…」
「んー?そういやそうですねー。いいじゃん別にオチなくても」
「…」
「え、安西先生なんで僕の首を掴むの?」
「高屋敷君」
「え?」
「取り合えず死んどいて下さいな☆」
結局それかよ!?あぎゃあああああああああ!!!!



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