ガララ


「こんにちわー!!…あれ?何してんですか安西先生?」
「仏像を彫っているのですよ、高屋敷君」
「はあ?それってなんか役に立つんですかー?ばっかみたい…(パァン!)いたっ?!」
「どうしてそんな事を言うのですか高屋敷君?!…先生は悲しいです」
「だ…だって」
「ああ、人が希望と夢に溢れていた古き良きあの時代は、一体何処に行ってしまったのでしょうか?」
「だって、僕たちの世代にはロクな未来が待っていないってみんな言うし」
「それは君達方が決めるべき事ではありませんか?どうしてやりもせず未来を決め付けるのです」
「先生…」
「高屋敷君、見ていて下さいな。例えどんな事であろうとも、私はやり遂げて見せます…いえ、やらなければ。君達若人の未来の為に!!
「あ…安西先生ー!!かっこいいですー!僕もやります!やってみせますよ!!」





「あれ?あれ?なんか変。センセ、なんか仏像の体のバランスおかしいですー」
「ん?…あー…高屋敷君、ちょっと服を脱いで御覧なさい」
「はぁ?!イヤですよ!!」
「下世話な被害妄想をしないで下さいな。骨格と筋肉の観察に決まっているでしょう?まさか君の様なガキの体にこの私が色気を感じるとでも?」
「だ…だって…」
「ま、ここは私が一肌脱ぎましょう………ほら、わかりますか高屋敷君?仏像は基本が女体ですから、あまり鵜呑みには出来ませんが…肩から肘と胴体の長さが比較出来るでしょう?ここを直せば巧くいくと思いますよ。筋肉の付き方も忘れずにね」
「へー…」
「そうそう、女性は臍が骨盤より上にありますからそれを踏まえましょうね」
「男は違うんですか?」
「ええ、男性の場合は…ほら、骨盤とほぼ同一線上にあるでしょう?」
「え?僕上の方にありますよ」
「…女顔とは恐ろしいものですねえ」
「恐ろしいの!?」





「くっ!!…ダメだ…ダメだダメだ!!ちくしょう、こんなんじゃない!僕が表現したいのはこんなものじゃないんだ!!」
「高屋敷君…落ち着いて下さいな」
「落ち着いてなんかいられないよ!!くそぉ、どうして?どうしてうまくいかないの?!このカンバスが僕を潰そうとするよ!まるで白い壁だ!!
「良いのですよ高屋敷君。…それで良いのです」
「なに…言ってるの?良い訳ないじゃないですか!!」
「君は気付いていないのですか?その悩みこそが伝えたい事だと

「悩むこと、間違えること…それこそが少年にだけ許される特権。それで良いのですよ高屋敷君。乗り越え、正す事が出来れば…ね」
「…そうか…僕、僕は…」
「さあ、筆を取りなさい。君の心を、白い世界に描く為に」




(ドッ!!)うあッ!!」
「駄目です駄目です高屋敷君!!この程度のサーブが取れないとは言わせませんよ!!」
「すみません…でも、腕がもう…」
「腕?…はん!そんな事で明日の大会に勝てると思っているのですか!?君がその程度だと言うのなら、私は役を降りさせてもらいますよ」
「くっ…もう一度!もう一度お願いします先生!!」
「…良い根性です。その言葉、嘘は無いでしょうねぇ?」
「はい!僕は…明日の試合に勝ちたい…ううん、勝たなくちゃいけないんです!!」
「ふっ…いいでしょう、いきますよ!次こそは見事場外を狙いなさい!!」
バッチ来いです安西コーチ!!






「安西先生…僕、不安になってきたんです。僕は、ホントにバスケが好きなのかな?」
「…」
「試合前に、こんな……馬鹿な疑問なのはわかってます。…でも」
「…高屋敷君、君に今日成すべき事を教えましょう」
「え?」
「楽しんでバスケをする…それだけです」
「だ、だけど僕…」
「君になら出来る…いいえ、君にしか出来ない事なのです」
「僕にしか…?」
「ええ、世界で一番バスケが好きな君視にしかね……高屋敷君、君は…私の教え子の中で最高の選手ですよ」
あ、安西先生!!







「…駄目でしたねえ、高屋敷君」
「ごめんなさい…僕がいけなかったんです。僕があの時Bを選んでなかったら…」
「そんな事ありませんよ。あれでは私だってBを選んでしまいますものね〜」
「うん…」
「まあまあ、そんな顔をせずとも。全力を出せたんです、それが一番の賞品ですよ」
「ん…そう…ですよね!!僕、やりきりましたよね!!」
「ええ!それはもう立派に……え?立派に何を?」
「あれ?僕…なんか途中からずれて…?」
「…」
「…」














「何がしたかったのですか高屋敷君!?」
なんで僕がー?!

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