「センセー。安西センセー!!」
「…ん?おや高屋敷君、お早う御座います。絶好の入学式日和ですねぇ」
「おはよーございます安西先生、暖かいですねー」
「新学期に天気が良いと気分もより晴れやかですね」
「もう春ですねー安西先生ー…桜もそろそろですねー…僕も二年生になるんだなー……」
「そうですねぇ〜…北海道は咲くのが遅いですから、入学式には間に合いませんけれどねぇ〜」
「カエルとか土から出てくるんですよね」
「そうですねぇ…」
「春ですねー…」
「でもまあ…桜と土の下といえば…」
「え?」
「冬に入る少し前に…桜の木の下に埋めた梶井基次郎似の生徒が、出て来ないと良いのですけれどねぇ〜」
「…わあ、やな事聞いちゃった」
「そろそろ急いだ方が良いですよ高屋敷君。入学式が始まってしまいます」
「あホントだ…じゃ安西先生、またあとで」


今年もマンモス校のうちの学校には、いっぱい新入生が来ました
去年は僕も、あの中で色んな希望に満ちていたんだと思うと、ちょっとくすぐったいです
あの頃は、生命の危機なんて考えもしてなかった
あの頃は、安西先生の事だって若くて礼儀正しくてかっこよくて、憧れたりしてた
この僕の後輩さん達が、少しでも多く生き残れる事を、心から祈ってます


…あ、安西先生だ


(『えー…と言う訳で、新入生の皆さん、入学お目出度うございます。……では、早速各自の教室に行ってもらいましょうか』)


『各自の教室に行ってもらいましょうか』
この言葉で周りの二三年生が動きます
…もちろん、僕も


(『教室に辿り着ければ生きててよし。それじゃあ運が良ければまた会いましょうね☆』)


僕の右横から、ガトリングガンが火を吹いています
後ろからは、座席の下から何かを取り出している音がします
前からは、日本刀の反射が眩しいです
左横からは、よくわからない呪文が聞こえてきます

僕はしゃがんで耳を塞いで、目をしっかりつむります

僕の後輩さん達が、少しでも多く生き残れる事を、心から祈ってます





無理だろうけど

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