「おや?高屋敷君…その手首の絆創膏は…」
「え…あ…こ、これですか?その……ただの、猫にひっかかれた痕ですよ!!」
「………へえ〜…」
「へ、変な詮索しないでください」
「その首についた跡は?」
「べべべ別に首吊ろうとした跡なんかじゃないですよ!!?」
「…(ガパン)
「わ!何勝手に鞄開けてるんですかあー!!」
「この睡眠薬の空き瓶は?」
「う…の、飲み終わった瓶もらっただけです…よ?」
「ほほう、ではこの辞世の句の様なものが書かれたルーズリーフはなんです?」
「そっそんなつもりで書いた訳じゃ…」
「…高屋敷君、上に着ているものを脱いで見せてごらんなさい」
「え?!や、やーですよ!!」
「良いから早くなさい」
「あっ!?やだっやめてくださっ…ーっ!!」
「やっぱりねぇ…なんです?このためらい傷は?」
「……あう…」
「あうじゃありません。なんだってまた自殺なんかしようとしているのです」
「そ…そんな事しな…」
「ほー?これだけの物的証拠があってまだそんな事をほざくのですか。人を馬鹿にして楽しいのですか?」
「う…ぁ」
「いやなんですよねぇ〜そうやって不幸ぶる人間って。自殺が悪い事だとは言いません、どうやってもどうしようもない問題は存在します、解決策がそれしかないなら死ぬのも良いでしょう。それに比べて自慰行為としての自傷ですか?はっ!間が抜けているにもほどがあります、殺してあげましょうか?」
「ふえ…」
「ああうっとうしいうっとうしい!こうやって追いつめると『あなたにはわからない』『苦しんでるの』『やめられない』知った事ですかそんな事、これだから思春期の女性はうっとうしい…と言うより、どうして君は自傷癖があるのです男の癖に。女顔のせいですか全く…。本当、苦痛から逃れるために選んだのが自傷だなんて、効率が悪いにもほどがありますねぇお馬鹿さん達?そんなに弱いなら淘汰されるべきなのです。もちろん高屋敷君、君もその馬鹿の一人ですよ。第一…」
「ふああああーん!!どうせ僕なんて自殺も出来ないダメ人間の代表ですよー!もういやいや!いやなのー!!安西先生は僕みたいな約立たずが嫌いだからいじめるんだー!!」
「…あ…」
「えうぅ…なにが【愛情表現】なのさ…ふぇ……っく、き…嫌いなら嫌いって言えば…いいじゃんっ……ひんん…っ…」
「…(そういえば最近いじめすぎたかもしれませんねえ)」
「う…うあああぁーん!!僕なんてこの世に必要のない人間なんだぁ!死んでようやく微生物の役に立つくらいだー!!」
「えー…っと…高屋敷君、生物は皆生きているだけで他の生物に迷惑なのです。別に君だけという訳では…」
必要性どころか迷惑だなんて!!
「(励ましたつもりだったのですが)高屋敷君の事は私が必要としていますよ?」
「ふえ…?ホント?」
「ええ、もちろんですとも」
「なんで?」
「そりゃあ君がいなくなってはいじめる楽しみがなくなりますしねえ」
「そんな必要性いやあ!やっぱ死ぬー!!」
「ああ待ちなさい高屋敷君。進路指導室は一階ですから飛び降りたって死ねやしませんよ」
「じゃあ石鹸で滑ってガラスに頭ぶつけて割って頚動脈切って死んでやる!!」
「だから少し待ちなさい、今何か君の必要性を考えてあげますから……まったく、普段虐めているとこんな時に困りますよねえ…。えー……っ…と……………………?」
「無いんだ!やっぱり僕の必要性なんて無いんだ!!僕なんて趣味嗜好品と一緒でなくても日常生活に全く困りはしないんだーー!!!」
「あああすみません、どうにも君の必要性が思いつかなくて…あ」
「さようなら安西先生、長い事お世話になりました。役には立ちませんでしたけど。さようなら」
「待って下さい高屋敷君!…確かに君が必要な理由は全くもってさっぱり思い付きませんが…」
「…」
「私が君と一緒にいたいという、この気持ちだけでは足りませんか?」
「っ…あ、安西先生ー!!
「高屋敷君…思い止まってくれたのですね」
「うわあああん!ごめんなさいセンセー!僕もう自殺なんてしないですよう!!これからもずっとずっと先生にツッコむの頑張りますよーー!!」
「よしよし、良い子ですねえ…」











「…まあアレですよね、愛されてる自信を与えられないのは恋人失格ですよねえ〜」
うおおおい!?誰が恋人だ誰が!!

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