「ただいまー。センセ、買ってきましたよ」
「お帰りなさい。ご苦労さまでした、買い忘れはありませんね?」
「もちのろんです」
「古い流行り言葉知ってますねぇ。…ん?縄とロウソク買って無いじゃありませんか」
「本気で言ってたの!?」
「まあ無くても作れますけれど…」
「何の料理?!」
「晩御飯のお楽しみですよ…さて、お勉強を始めましょうか、高屋敷君?」
「えー?僕疲れちゃいましたよぉー!!」
「私がそんな事を気にするような人間だと思いますか?」
「…思わないです…」



「えっと、んっと、古代オリエント、ギリシア・ローマから発展して。主に鳥獣の形で。旗、盾に用いて…」
「貨幣にもですよ」
「あ、そっか。えと、ヨーロッパでは12世紀頃から貴族の目印として普及して」
「古代オリエント、ギリシア・ローマではどのように用いられたのですか?」
「え?うーんと…王や貴族が系譜、格式、権威を象徴するために?」
「不正解です、その頃にはもう一般の戦士も利用していますよ」
「あう…」
「覚えの悪い子です、ちゃんと勉強しているのですか?」
「だ、だってだって!紋章学なんて僕興味ないですもん!!」
「正確に言えば紋章学は帝王学の一環として勉強しているのです。うちの学校では三年かけて帝王学を履修しますからね」
「帝王学なんてもっと興味ないよ!僕血統よくないもん!!(ドン!!)ヒィ!?
「ちっ…これだから下賎な考えは嫌いなんですよねえ…嘆かわしい現代教育ですよ」
「あわわわわ…ご、ごめんなさいでもなにも叩いた机にヒビが入るほど怒らなくても…」
「良いですか高屋敷君、帝王学はつまり【教養】の為なのです。本来ならば教養なんて学校では絶対手に入らない、ある種の環境でしか学び取れない特殊学問ですよ?それをわざわざ我が【私立挫賂眼学院高等学校】が教えている理由はわかりますか?」
「わ…わかりませ…」
「はんっ!そんな事だろうと。これだから嫌なんですよねえ〜」
「ご、ごめんなさ…い」
「まあ良いでしょう、教養がつけば自ずと解かる理由です。……ほら、もう一度最初から紋章学の基礎を言いなさいな」
「は…はい、うんと……」







「そろそろ休憩しましょうか?高屋敷君」
「え………ま、まだ大丈夫…です、よ?」
「そう言わずに、お茶でも飲みましょう。当分の吸収は脳に効果的ですからねえ」
「は、はい…」
「…脅えてますねえ?」
そそそんなこと!!
「そうですか?ま、さっきは怒り過ぎましたしねえ高屋敷君相手に。飼い主として失格ですね」
「…」
「さっきストロベリーパイを焼いたのですよ、ちょうど一週間前にウヴァの茶葉が届きましたしね。高屋敷君、紅茶は飲めましたでしょう?ディンブラとドアーズ、カンヤム・カンニャムもありますけれど、どれが良いですかねえ?」
「…安西先生のお好きなので」

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